住宅ローン減税の改正で購買意欲は変わった?住宅購入の「今」をインタビュー

2022年5月20日

2020年12月に対象となる建物の床面積は50㎡から40㎡に緩和された住宅ローン減税制度。昨年の2021年12月に税制改正大綱が取りまとめられ、住宅ローン減税制度の控除率なども大きく見直されました。今回の改正で控除率は1%から0.7%に縮小し、期間は原則10年から13年に延長。このような住宅ローン減税制度の改正で人々の動向に変化はあったのでしょうか。

今回、マンションを中心とした不動産直販サイトを運営する株式会社FLIEの榎本社長にインタビュー!マンションをはじめとした住宅を案内する「プロ」の目線から住宅ローン減税制度変更の影響や住宅購入の動向をお聞きしました。

 

お話を伺った方

 株式会社FLIE 代表取締役 榎本 亮太さん

【経歴】1980年生まれ。異業種から参入する形で大手リノベーション会社に営業職として入社後、仲介営業を担当。その後、本店店長を経てリースバック事業、買取事業、直販事業を経験し、株式会社FLIE代表取締役に就任。

 

住宅ローン減税の税制改正で購買意欲に変化は?

控除率は縮小しつつも期間は延長された住宅ローン減税制度。今回の住宅ローン減税改正を受けて、人々の購買意欲に変化はあったのでしょうか。独自にアンケート調査を行っている同社に聞いてみました。

 

住宅の購買意欲にあまり変化はみられない結果に

出典:「フリエ住まい総研」(株式会社FLIE)

ー住宅ローン減税の改正後も購買意欲が「変わらない」と答えた方が多かったのは、控除率の縮小などが原因でしょうか?

住宅ローン減税の控除率縮小だけでなく、時期的な要因も大きいと考えています。

 

要因①コロナ禍で住まいに対する考え方が変化

ー時期的な要因とは?

コロナ禍で一時的に活発になった住宅購入の動きがおさまったのだと考えます。住宅購入に向けて準備していた方が緊急事態宣言明けに一気に動いたため、一時期では問い合わせ件数が2~3割増しになり、不動産マーケットが活発に動きました。

現在はその動きがひと段落したため、今は様子見というお客さまが多い印象です。

 

要因②物件価格が高くなっている

ーほかに考えられる要因はありますか?

物件価格が高騰していることも要因のひとつです。親の介護や子どもが通う学校の都合など、引っ越しに関して急を要するものがあれば控除率や物件価格に関係なく行動する方は多いでしょう。一方で単に賃貸から脱したいために購入を検討している方からすると、物件価格が高いので今購入する必要はないと思う方が多いのではないでしょうか。

 

ーなぜ物件価格が上がっているのでしょうか?

工事費が上がってしまったことと、需要が増えて価格が吊り上がったことが要因です。コロナ禍でロックダウンが世界各国で発生して住機や建材などの生産が遅れたため、工事費が上がってしまったのでしょう。

 

ー物件価格は今後下がりますか?

今のところ下がる理由がないため、高止まりになることが考えられます。SUUMOなど不動産ポータルサイトでは 、物件を見るページ(PV数)はコロナ前と同じくらい見られていますが成約数は昨年に比べ、減少傾向のようです。住宅に興味は持っているけれど、物件価格が高いため今は様子見という方が多いのでしょう。

 

購買意欲は今後上がる?

物件価格が高止まりしている現在、家を購入するタイミングはいつになるのでしょうか。住宅の購買意欲の変化をお聞きしました。

 

「購入せざるを得ない」と考えるのでは

ー購買意欲が今後上がることはありますか?

購買意欲が上がるというよりは、「購入せざるを得ない」と感じて住宅を購入する方が増えていくと考えています。

 

金利上昇や週休3日制の導入が要因

ー今買わないといけない理由があるのですか?

働き方が変わり、週休3日制を取り入れて給与を減らす会社が登場したことや金利上昇の動きなどが原因として挙げられます。金利が上がらないうちに、所得が下がらないうちに住宅を購入しようという方が増えていくのではないでしょうか。

 

コロナ禍で生活様式が変化

ーコロナ禍で生活様式が変わったことにより、住宅購入の動向も日々変化しているのですね

そうですね。生活様式の変化に伴い、間取りなど住宅のタイプにも変化が見られました。当社ではおもに中古マンションのリノベーション再販事業の売主企業さまとやり取りしており、標準装備としてテレワークの部屋や作業スペースを導入するところが増えています。リモートワークが増えて自分の部屋を持ちたいという方が多くなったのでしょう。

 

住宅ローン減税の対象になる建物の床面積条件が緩和!動向の変化は?

住宅ローン減税の控除率は縮小されましたが、対象となる建物の床面積が50㎡から40㎡に緩和されたことも大きなポイント。住宅ローン減税制度改正後の床面積緩和という観点から動向の変化を見ていきましょう。

 

床面積の緩和で住宅購入のハードルが下がった

出典:「フリエ住まい総研」(株式会社FLIE)

ー住宅ローン減税制度の床面積緩和で購買意欲が上がったという方が増えましたね

購買意欲が上がったというよりは手が届きやすくなったのでしょう。以前は、住宅ローン減税を受けたい方は50㎡以上の物件を探さなければいけませんでしたが、40㎡に緩和されたことで物件の選択肢が広がりました。今後、住宅購入を決める大きなきっかけづくりになっていくと考えられます。

 

単身世帯の購買意欲がとくに増加

※出典:「フリエ住まい総研」(株式会社FLIE)

ー3人世帯以上よりも単身や2人世帯の方の購買意欲が若干高くなりました。単身で住宅を購入する方が増えているのでしょうか?

10年以上前から単身で住宅を購入される方は増えています。3人以上で暮らせるファミリー物件は要らないけれど、40㎡でも住宅ローン控除が受けられるのであれば賃貸でなくてもよいと考え、購買意欲が上がったのではないでしょうか。

 

ーなるほど。賃貸より購入するほうがお得なのですか?

資産を残すという理由で購入する単身世帯の方が多いと感じます。今の暮らしをもう少し豊かにしつつ今の家賃より安く支払い、最終的に自分の資産にするという考え方です。住宅ローンを完済すると購入した住宅は財産となるため、賃貸に出し投資用に切り替えるなど新たな価値を生むことができます。

 

住宅ローンを組む際に気を付けるべきポイント

住宅ローンを組む際、どんなことに気を付けるべきでしょうか。銀行を選ぶコツや住宅ローン審査において注意すべきことをお聞きしました。

 

金利だけを考えて銀行を決めない

ー住宅ローンを組む際、どのようなことに注意すべきでしょうか?

住宅ローンは金利だけで銀行を決めないようにしましょう。付帯している団体信用生命保険のサービスとの兼ね合いやローンを組む際の手数料、どんな職種・物件に強いのかなど、各行でさまざまな特徴があります。依頼する住宅会社に相談して銀行選びを進めましょう。

 

物件は生もの

ーほかに気を付けることはありますか?

よい物件を見つけたら早めに住宅ローン審査にむけて動きましょう。売主の方は、早く確実に購入できる消費者の方を優先します。よい物件はどうしても競合してしまうため、早めに準備しておくとよいでしょう。

もしお気に入りの物件を買い逃したとしても、早めに住宅ローン審査に通っていれば次の物件で有利になることもあります。住宅ローン審査をして買い逃したとしても決して無駄にはならないので、きちんと準備することが大切です。

 

利用できる減税制度をチェックしよう

ー物件選びで気を付けるべきことはありますか?

築年数や面積によって利用できる減税制度は異なるため、自分がどのケースにあたるかチェックしましょう。耐震基準適合証明書などの証明書があれば申請できるなど、築年数が古いから制度が利用できないわけではありません。物件選びをする際は築年数が経っているからダメと決めつけるのではなく、いろいろな可能性を考えながら希望条件を定めることが大切です。

 

副業でも確定申告を!

ー住宅ローン審査で気を付けることはありますか?

リモートワークの導入で副業を始めた方は、きちんと確定申告をしておきましょう。確定申告を忘れていたり申告の仕方を間違えたりすると、住宅ローン審査に通らない可能性もあります。しっかり申請できているかを確認しながら住宅ローン審査を進めましょう。

 

住宅購入で大切なこと

物件価格の高騰や税制の改正など目まぐるしく変化する不動産マーケット。なぜ自分は賃貸ではなく住宅購入に踏み切るのか、一度立ち止まって考えてみることも必要です。住宅購入を検討するうえで大切なことをお聞きしました。

 

目的を明確にする

ー住宅購入で大切なことを教えてください。

購入の目的は「投資」なのか「住むこと」なのかをはっきり決めておきましょう。投資という観点からの「よい住宅」と自分にとっての「よい住宅」は相反する場合もあります。

 

ー投資としての住宅とはどういうことですか?

投資という観点からの住宅とは、今後どのくらい売れるかどうかに重きを置いて住宅を探すということです。たとえば3年後に売ることを前提にして駅に近いボロボロのマンションを安く買った場合、その駅が再開発されると物件価格は上がりますよね。

安く買って高く売るという観点から見ると、必ずしも住み心地のよいマンションが売れるというわけではありません。

 

ー先を見据えて目的を明確にすることが大切なのですね!

そうですね。3,5,10年後など短いスパンで自分の収入やキャリアアップを想定し、住むことに重きを置くのか、投資を重視するのかを考えることが大切です。

 

まとめ

今回は住宅ローン減税が改正されてからの購買意欲や動向の変化など、住宅購入の「今」の声をお聞きしました。住宅ローン減税改正だけでなく、コロナ禍での生活様式・働き方の変化なども深くかかわっていることがわかりましたね。

住宅購入の目的を改めて見つめなおし、納得のいく住まい選びをしていきましょう!

 

会社名 株式会社FLIE
代表取締役 榎本 亮太
所在地 150-0002 東京都渋谷区渋谷2-2-2 青山ルカビル6F
電話番号 03-6712-6292
事業内容

FLIE(フリエ)は「売主と買主が自由に、かつ手軽に不動産取引ができる仕組み」を目指した不動産直販プラットフォームです。

物件の売主と買主を直接マッチングするオンラインサービスのため、透明性の高い正確な物件情報を得ることができ、費用面では仲介手数料が不要となる、不動産業界の革新的なサービスを提供しています。売主や買主からのご要望により「FLIEエージェント」が手続きのサポートも行いますので、直接取引が不安な方も安心してご利用いただけます。

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