木造住宅の耐震性と選ばれる理由について解説!

2022年2月10日

木造住宅に住む際に「地震に耐えられる家にしたい。」「耐震補強について知りたい。」など、耐震性について気になる方もいるのではないでしょうか。木造住宅ではさまざまな工法があり、特徴も異なります。しかし鉄筋コンクリートなどに比べて、木造住宅は耐震性が低いイメージがあるため、自然災害に耐えられるのか不安に思う方もいることでしょう。

この記事では、木造住宅の構造や木造住宅の耐震性、木造住宅が選ばれる理由について解説します。

 

木造住宅の構造

木造軸組工法​

一般的に多く採用されている代表的な日本の伝統工法です。別名「在来工法」とも呼ばれています。コンクリートの基礎に柱や梁で骨組みをつくり、筋交いを入れて補強し接合部分を金物で連結させて強度を高めます。

林野庁の「平成30年度 森林・林業白書」によると、木造軸組工法のシェアは76%でトップとなっています。(ツーバイフォー工法22%、木質プレハブ工法2%)
(参考:林野庁「平成30年度 森林・林業白書(令和元年6月7日公表)第1部 第4章 第3節 木材利用の動向(2)」)

大きな開口部を作りやすい、増改築がしやすい、間取りやデザインの自由度が高いなどが特徴です。

適切な耐震設計により、耐震性や耐久性に優れた住宅を実現します。

 

木造壁式工法(ツーバイフォー)

2インチ×4インチの木材でパネル状の床や壁、天井の空間を構成するシンプルな工法です。
ツーバイフォーは、北米で決められた規格で四方の壁4枚と天井と床、合わせて6枚でとなり、縦5.08センチメートル、横10.16センチメートルのサイズです。(1インチあたり約2.54㎝)

用途により、2×6(ツーバイシックス)、2×8(ツーバイエイト)、2×10(ツーバイテン)などもあります。面で支える面構造で、耐震性・気密性が高くなっています。また、火の通り道にある床や壁などの枠組み材に​​​​ファイヤーストップ材を用いるため、耐火性にも優れているのが特徴です。

 

木造ラーメン工法

筋交いや耐力壁を使用せず、木造の柱と梁で支える工法です。柱と梁の接合部を剛接合とし、強靭な枠を形成します。ドイツ語の「Rahmen(額縁)」を表しています。

間取りの自由度が高く、広い空間を設けることができるのです。また、​​構造設計もシンプルで工期が短いのも特徴です。

 

木造住宅の耐震性について

ここでは、木造住宅の耐震性について解説します。

 

耐震・制震・免震の違い

・耐震
耐震構造は、地震の揺れに耐えるように建物の構造部分を丈夫につくる工法です。建物が倒壊しないように柱や梁を太くしたり、壁に筋交いの本数を増やしたりするなど、耐震性を高めます。

制震・免震に比べ建築費用が安くなる傾向にあります。しかし、繰り返しの地震で建物にダメージが蓄積され、倒壊のリスクが高まるため、注意が必要です。

・制震
制震構造は、建物の構造部分に制震装置(ダンパー、オイルダンパーなど)を設置し、地震の揺れを吸収させる目的でつくられた工法です。

地震の揺れは建物に伝わりにくく、繰り返しの地震にも強いのが特徴です。特に高さのある建物に効果を発揮するのです。東京スカイツリーなどの建物で採用されています。

最近では、一般住宅用のリフォーム用制震装置が増えつつあり、耐震リフォーム工事と同時に設置するケースがあります。

免震より建築費用が安く、地震後のメンテナンスは基本的に不要です。

・免震
免震構造は、建物と基礎の間に免震装置(積層ゴム)を設置し、地震力の伝達を低減させる工法です。

地盤と建物が離れていることにより、制震構造より揺れが軽減できます。したがって、建物の倒壊や家具の転倒も少なくなります。

しかし、耐震、制震工法に比べ建築費用が高く、定期的なメンテナンスが必要です。

 

地盤の強さを確認する

ここでは、地盤の強さを自分で調べる方法を解説します。

・古地図を確認
東日本大震災の影響で古地図を閲覧する人が増えています。開発が進むと、元の地形がわからなくなるため、大まかな地盤の状態を調べる際に役立つでしょう。

・ハザードマップを確認
ハザードマップは、災害の範囲や洪水の危険個所などの被害を予想した地図を指します。
洪水や火山、洪水、内水、高潮、土砂災害、地震、津波などのハザードマップがあります。

地震ハザードマップでは、地盤によって揺れやすい地域と揺れにくい地域が地図上で確認が可能です。

・耐震等級
耐震等級は、地震に対する建物の強度を示すものです。「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に規定されています。

品確法の「住宅性能表示制度」で耐震等級1〜3まで設けられています。

耐震等級1
数百年に1度起こる大規模地震(震度6強〜7レベル)に対し、倒壊や崩壊の危険性がない住宅を指します。これは、建築基準法が求める最低限の耐震基準と同等であることを示しています。

耐震等級2
耐震等級1において想定される地震の1.25倍である地震が発生した場合でも倒壊や崩壊の危険性がない住宅を指します。

学校や病院など、公共施設と同等の耐震性能を有する住宅になります。

災害時の避難場所は、耐震等級2以上の強度が必要です。

また、​​​​長期優良住宅では耐震等級2以上で認定されます。長期優良住宅に認定されると、住宅ローン減税や不動産取得税など、税金面で優遇を受けられます。

耐震等級3
耐震等級1において想定される地震の1.5倍である地震が発生した場合でも倒壊や崩壊の危険性がない住宅を指します。

災害時の救護活動などの拠点となる消防署・警察署と同等の耐震性能を有する住宅になります。

耐震等級2・3を取得するには、住宅性能評価書の交付が必要です。

 

新耐震基準について

・新耐震基準
1981年(昭和56年)6月1日以降に建築確認において適用されている基準です。震度6強~7程度の地震でも家屋が倒壊・崩壊せず、破損しても修繕で生活が可能となる基準を指します。

国土交通省の調査では、旧耐震基準(昭和56年5月以前)の木造建築物の倒壊率は28.2%(214棟)に上っており、新耐震基準の木造建築物の倒壊率(昭和56年6月~平成12年5月:8.7%(76棟)平成12年以降:2.2%(7棟))と、旧耐震基準の木造建築物の方が大きな被害となっています。

(参考:国土交通省「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書のポイント)

 

耐震補強

地震に耐えられる木造住宅にするためには、耐震補強を検討します。筋交いや構造用合板を使った方法や耐震壁を用いた耐震補強工法などがあります。

 

木造住宅が選ばれる理由

ここでは、木造住宅が選ばれる理由について解説します。

 

建築費用が抑えられる

使用する木材等によって異なりますが、鉄骨造(S造)や鉄筋コンクリート(RC造)より建築費用が抑えられます。構造自体もシンプルで工事費用も抑えることが可能です。

 

断熱性・調湿機能に優れ、快適に過ごすことができる

木材は熱を通しにくく、調節機能にも優れています。湿気の多い時期は、カビの発生を抑え、乾燥しやすい時期は、木材の水分を空気中に放出する効果が期待できます。

 

間取りやデザインの自由度が高い

木造住宅では、構造がシンプルで間取りやデザイン面での自由度が高く、中でも木造軸組み工法や木造ラーメン工法が自由度が高いです。

 

まとめ:大きな地震が心配な方は耐震補強を検討しましょう

木造住宅の構造や木造住宅の耐震性、木造住宅が選ばれる理由などについて解説しました。
木造住宅を建てる際は、地盤の強さを確認することが大切です。自分で調べる場合は、古地図やハザードマップで確認する方法があります。より詳細を知るには、地盤調査が必要です。

一方、木造住宅が選ばれる理由として、建築費用が抑えられる、断熱性・調湿機能に優れている、間取りやデザインの自由度が高いなどがあります。長く住まれている木造住宅で大きな地震が心配な方は、耐震補強を検討するとよいでしょう。