長期優良住宅の認定基準は?メリット・デメリットも解説!

2022年5月9日

せっかく家を建てるなら、長く住める質のよい家を建てたいですよね。2009年6月にスタートした長期優良住宅の認定制度ではさまざまな支援策が設けられているため、うまく活用してかしこく丈夫な家を建てたいものです。

しかし、長期優良住宅に認定されるにはいくつかの認定基準があります。また、長期優良住宅の制度や手続きにはポイントがあるため、家づくりの際には押さえておくことが大切です。

今回は長期優良住宅の認定基準やメリット・デメリットをはじめ、2021年5月の法改正で見直し・改定されたポイントも含めて解説します。

 

長期優良住宅とは

長期有料住宅とは、国が定めた長期優良住宅認定制度の認定基準を満たした住宅のことです。

認定の条件として、次の4つを満たす必要があります。

・住宅の構造および設備について長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられていること。

・住宅の面積が良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること。

・地域の居住環境の維持・向上に配慮されたものであること。

・維持保全計画が適切なものであること。

出典:国土交通省「長期優良住宅のページ」より

上記4点の条件にあてはまるには、いくつかの認定基準を満たすことが必要です。長期優良住宅の認定基準を見ていきましょう。

 

長期優良住宅の認定基準とは

長期優良住宅に必要な4つの条件を満たしているかどうかは、9つの認定基準で判断されます。今回は、一戸建ての長期優良住宅に適用される7つの項目について一覧表にまとめました。判断に使われる具体的な基準値や目安も参考にしてください。

それでは、長期優良住宅を認定する各項目についてくわしく説明していきます。

 

耐震性

まず長期優良住宅における「耐震性」とは、地震の被害に遭った際も簡単に改修でき、その家に住む続けられる基準を指します。1~3級まである耐震等級のうち、耐震等級2以上が長期優良住宅の条件となります。

(一社)日本耐震診断協会によると、阪神淡路大震災で亡くなった方6433人のうち、約86%が自宅の倒壊によって窒息死もしくは圧死したといわれています。耐震性のある長期優良住宅を建てることは、家を長持ちさせるだけでなく自分や家族の命を守ることにもつながるのです。

出典:(一社)日本耐震診断協会HPより

 

省エネルギー性

長期優良住宅における「省エネルギー性」では、平成11年(1998年)に策定された省エネルギー基準と同じ性能が求められます。

長期優良住宅の省エネルギー性については、2021年から基準の見直しが行われています。断熱性能は祐4以上とされていましたが、現在は「ZEH住宅に相当する性能」が条件となっています。

 

居住環境

各地の行政庁が定めた地区計画や景観計画、街並みの計画に合わせたものを長期優良住宅として認定することです。

 

維持・保全計画

10年に1度は点検を行い、建築後は定期的に点検・補修を行うことが求められます。これは将来を見据えて家を長持ちさせることが目的です。

「給水・排水の設備」や「構造上主要な部分」などの維持保全計画を作成し、具体的な点検時期や内容を定めます。

 

維持管理・更新の容易性

建物の構造をかたちづくる構造躯体が100年持ったとしても、住宅設備の劣化についても考えなければいけません。よって、耐用年数が短い住宅設備は容易に清掃・点検・補修ができるように措置を施す必要があります。

具体的には、コンクリートに埋め込む配管がないことや、排水・掃除口の清掃措置などが求められます。

 

劣化対策

長期優良住宅では、その名の通り長期にわたって使われる住宅が求められます。とくに木造住宅は寿命が短いといわれているため、工事段階から工夫を施して長持ちさせる住宅にすることが大切です。

具体的には、柱や梁などの構造躯体が75~95年ほど継続して使えるよう措置を加えることなどが挙げられます。

 

住戸面積

長期優良住宅には、面積についても基準が設けられています。一軒家の場合は75㎡以上(少なくとも1つのフロアが40㎡以上)、共同住宅では55㎡以上となっています。

 

長期優良住宅のメリット

長く住める快適な家づくりや次世代に住み継ぐ家づくりを考えている人にとって、長期優良住宅の認定を受けるメリットをご紹介します。

 

住宅ローンの金利を引き下げられる

出典:国土交通省HPより

長期固定金利の住宅ローン「フラット35」を組む場合、長期優良住宅であれば住宅ローンの金利が一般住宅よりも引き下げられます。

「フラット35S」も適用できれば、さらに金利を下げられます。フラット35Sとは、フラット35の利用者が長期優良住宅など省エネルギー性、耐震性などを備えた質の高い住宅を取得する場合に、フラット35の借入金利を一定期間引き下げる制度です。

また、住宅ローンの返済期間が50年と長く、売却時には購入者にローンを引き継げる「フラット50」など、条件のよいローンを組むこともできます。

 

税制上の優遇措置がある

長期優良住宅の認定を受けると、 住宅ローン利用者は住宅ローン減税制度、自己資金で建てる人は投資型減税制度を利用できます。

住宅ローン減税制度では、住宅ローンの控除対象限度額が一般住宅の3,000万円よりも高い、5,000万円に引き上げられます。所得税の最大控除額は10年間で455万円です。

投資型減税制度では、性能を強化するために支出した費用の約10%分が所得税から控除され、最大控除額は65万円です。

そのほか不動産取得税の減税や、登録免許税の税率引き下げ、規定に応じて固定資産税の減税期間が延長されるなど、一般住宅では受けられない優遇措置があります。

 

地震保険などが値引きされる

長期優良住宅の認定を受け、認定基準に定められた等級に達していれば、確認資料を提出することで、建物の免震・耐震性能に応じて地震保険料の割引が受けられます。

割引率は等級が高ければ高いほど上がり、耐震等級2なら割引率は30%、耐震等級3なら割引率は50%です。免震建造物の場合は、耐震等級3と同じ程度の割引が受けられます。

 

補助金を活用できる

地域住宅型グリーン化事業は政府が推進する省エネ関連事業の一つで、一定の水準を満たした木造住宅に対して補助金が出される制度です。長期優良住宅はこの制度の「長寿命型」にあたり、申請して採択されると、補助金対象経費の1割以内の額で、住戸一戸あたり最大110万円が支給されます。

ただし、地域住宅型グリーン化事業で採択されたグループに属する中小工務店が建てる住宅でないと対象となりません。申請や手続きも工務店が行います。関心がある場合は、施工を依頼予定の工務店で申請が可能か、問い合わせてみましょう。

 

長期優良住宅のデメリット

長期優良住宅の認定を受けるにあたり、デメリットも把握しておきましょう。長期優良住宅の建築にあたっては、メリットとデメリットの両方を踏まえた上で計画に進むことが大切です。

 

一般的な住宅より建築費用が割高

長期優良住宅は頑丈な基礎のための構造材や断熱性の強化など、性能を高めるための費用が割高です。しかし、これらは長く快適に住める家を建て、認定を受けるために必要な初期コストといえます。

建築後は光熱費などのランニングコストは一般住宅より抑えられることを踏まえ、長期的・総合的な視点で費用対効果を考えましょう。

 

申請時に時間・手数料がかかる

認定を受けるためには技術審査が必要となり、一般住宅よりも着工までに時間がかかります。

2021年の法律改正では審査や確認の手続きが改善されましたが、申請書類の作成から認定通知書が交付されるまで時間がかかることを念頭に置きましょう。

審査を受けるためには、費用もかかります。申請手数料は所管行政庁やケースによって異なるため、事前に必ず所管行政庁に確認しましょう。

 

認定後の手間ーメンテナンスや記録の作成・保存義務

長期優良住宅の認定を受けると、維持保全計画に基づいて定期的な点検やメンテナンスを行うほか、地震や台風などの災害があったときには臨時点検の実施が必要です。家屋の点検は安全に住み続けるために行いたいことですが、定期的な実施に加え、メンテナンスの記録書類の作成や保存を手間に感じることもあるでしょう。

計画に従ったメンテナンスを行わないと、所管行政庁から改善を求められたり、認定が取り消されたりすることもあります。

所管行政庁による維持保全の状況調査が行われる際には、点検やメンテナンスの記録を参照する必要があるため、記録は必ず作成して保存しておきましょう。

 

2022年版!長期優良住宅認定基準の改定ポイント

2021年の改定では、長期優良住宅を建てようと考える人がデメリットに感じる部分の見直し・改定が進んだほか、災害への配慮なども追加されています。制度を活用するにあたって、押さえておきたい改定のポイントをご紹介します。

 

認定対象の拡大

今回の法改正では、長期優良住宅の認定対象が次のように拡大されました。
‐マンションなど共同住宅
(変更前) 区分所有者がそれぞれ認定を受ける
(変更後)  →管理組合が一括して認定を受けられるようになった(住棟認定の導入)(2021年2月20日施行)

‐既存住宅
(変更前) 既存住宅は改修、建築工事をしないと認定が受けられない
(変更後) →既存住宅でも認定基準を満たしていれば、改修工事なしでも認定される(2022年10月1日施行)

 

手続きの合理化

今までは住宅性能評価をする民間機関と、長期優良住宅の基準確認を行う機関は別だったため、それぞれの機関で確認手続きを行う必要があり、手間も時間もかかっていました。

今回の改正では、 民間機関が住宅性能評価を行う際に並行して、長期優良住宅の基準確認ができるようになり、手続きの簡便化が進められています。(2022年2月20日施行)

 

災害リスクを配慮する基準の追加

近年、豪雨などの災害が各地で頻発している現状を踏まえて、「自然災害による被害の発生防止または軽減への配慮」が追加されました。よって災害リスクが特に高い地域では、長期優良住宅の認定取得ができない、または一定の措置を講じることが必要になります。(2022年2月20日施行)

長期優良住宅の認定を行わない区域などの一覧と、国の対応方針をまとめました。

 

断熱性能の基準値の引き上げ

長期優良住宅に求められる断熱性能の要求値が「断熱等性能等級4」から「ZEH相当」に引き上げられます。(2022年10月1日施行)

ZEH(ゼッチ)とは「ゼロ・エネルギー・ハウス」の略で、使うエネルギーよりも創るエネルギー量が多い住宅のことです。断熱性能の向上や設備システムの導入によって省エネルギーを実現。そのうえで再生可能エネルギーを活用し、年間のエネルギー使用量を±0にすることを目指しています。

 

まとめ:認定基準や改訂ポイントをおさえて、長く快適に住める家を建てよう!

この記事では国が進める長期優良住宅の特徴やメリット・デメリット、認定基準、法改正後の改定ポイントをご紹介しました。

長期優良住宅を建てると手間やコストはかかりますが、補助金や税制上の優遇など、建設を支援する制度も活用できます。また今回の法改正によって対象者が広がり、手続きがしやすくなるなど、改善も進みました。

認定制度のメリットや改善点を押さえて、長く暮らせる家、次世代に住み継げる家づくりに活かしていきましょう。