すまい給付金とは?FPがくわしく解説

2022年3月25日

住宅を購入するにあたってチェックすべきなのは、給付金制度。2016年から行われていたすまい給付金制度の実施期間は昨年末で終わってしまいましたが、引き渡し期間が延長!契約した期間によっては、まだ申請できるのです。

この記事では、給付対象になる人や申請に必要な書類、また給付金がいつもらえるかなどを、FPサテライト株式会社の所属FP(ファイナンシャルプランナー)である山口りな先生にインタビュー!住まい給付金制度について、プロの目線から語っていただきました。

 

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お話を伺った方

FPサテライト株式会社 山口 りな(やまぐち りな)さん

【経歴】約6年半テレビ山梨でアナウンサーを勤め退職。退職をきっかけにお金に関わる制度を身近に感じたことでお金や経済の勉強をはじめ、FP資格を取得。フリーアナウンサーとして活動しながらFPとしても活動中。FPアナウンサーとしてお金にまつわる知識を届けている。

【資格】日本FP協会 AFP認定者・2級ファイナンシャル・プランニング技能士・TOEIC895点

 

すまい給付金制度とは?

そもそもすまい給付金制度とは、どのような制度なのでしょうか。よく「住まい給付金」と呼ぶ方もいらっしゃいますが、正しい制度名は「すまい給付金」。2016年から2021年の6年間、住宅購入を支援するために導入されていました。

 

住まい給付金は住宅購入を支援するための制度

ーすまい給付金が始まったのはいつですか?

消費税が8%に引き上げられた2016年からです。増税による経済的負担を和らげるために設けられ、2021年末まで約6年間施行されました。

 

ーなるほど、増税の負担を和らげるためなのですね。

それ以外に、住宅ローン減税制度の補填という役割も担っています。住宅ローン減税制度とは、ローン残高の1%をすでに支払っている所得税から控除する仕組み。住宅ローン控除が多くても所得税そのものが少ない場合は控除される額が減ってしまうため、収入が高い人のほうが多く控除されてしまうという問題がありました。

住宅ローン減税制度から生じる控除の差を別の対策で補填しようということで、すまい給付金制度が登場しました。

 

住宅ローン減税が4月から0.7%に

ー住宅ローン減税制度の控除率について教えてください。

税制が変わったため、今年4月から控除率が0.7%になります。また新築住宅については、控除期間が10年から13年という風に変更されています。

 

これから給付金対象の家を購入することはできない

ーすまい給付金の実施期間が終わったということは、これから契約する人は給付金をもらえないということですか?

そうですね。これから契約する人は対象にはなりませんが、給付金制度自体がなくなるわけではありません。今年からまた新たな給付金制度が登場します。

 

2022年から新たな給付制度が登場

ー新たな給付金制度とは何ですか?

「子ども未来住宅支援事業」という給付金制度です。この制度は、若い夫婦や子育て世帯が対象者になるなど、住まい給付金制度と全く同じものではありません。しかし制度としては設立されるため、対象者になれば住宅ローン減税制度との併用が可能です。

 

昨年までに契約した人であれば申請が可能

すまい給付金制度の実施期間が終わったからと言って、もう申請が間に合わないわけではありません。すでに住宅を契約しており今年の12月末までに引き渡しを受けて入居できる場合は、申請することができます。

 

コロナ禍で引き渡し期限が延長

ー今年の12月末までに入居できれば申請できるということですか?

そうですね。コロナ禍で引き渡し期限が1年間延長されたため、今年の12月末までということになりました。

 

ー申請に期限はありますか?

引き渡し日から1年3か月以内に申請すれば大丈夫です。つまり、今年12月に入居した人であれば2024年3月までに申請すれば良いということです。

ただギリギリになると、書類に不備があった場合に期限を過ぎてしまうこともあります。余裕をもって申請することが大切です。

 

申請に必要な書類

それでは、申請に必要な書類は何があるのでしょうか。注文住宅か中古住宅か、また住宅ローンの有無などで、用意する書類は変わってきます。自分がどのケースに当てはまるか確認しながら読んでいきましょう。

 

①給付申請書

ーそれでは、まず全員が必要となる書類を教えてください。

1つ目に、給付申請書です。すまい給付金のホームページ上からダウンロードすることもでき、新築住宅か中古住宅か、また住宅ローンを組むか組まないかなどで書類の様式が変わります。

 

②住民税の課税証明書

2つ目に、個人住民税の課税証明書です。収入の確認のために必要な書類ですが、市町村をまたぐ場合は引っ越し前に準備することがおすすめです。

 

③住民票の原本

3つ目に、住民票の原本。これは引っ越し後に取得するもので、入居日の確認のために必要になります。

 

④登記簿謄本~取得には住民票と印鑑証明が必要

4つ目に、登記簿謄本。これも引っ越し後に取得するもので、住民票や印鑑証明がないと取得できないため注意しましょう。また、これは司法書士の方に代行してもらう方が多いです。不動産登記と一緒に登記簿も取得してもらうようお願いすると良いでしょう。

 

⑤住宅の品質を確認する書類~事業者の方が用意する

5つ目に、住宅の品質を検査したことを示す書類。事業者の方が用意するものですが、万が一ない場合は申請できないため、知っておくと良いでしょう。

 

⑥振込先の銀行口座

6つ目に、銀行口座が確認できるコピーや画像。給付金の振込先を確認するために必要です。通帳のコピーや、ネット銀行の場合は銀行名と口座名が確認できるスクリーンショットなどを準備しましょう。

 

⑦工事請負契約書または不動産売買契約書~新築住宅の場合

新築住宅の場合、注文住宅を建てる方は工事請負契約書、分譲住宅を建てる方は不動産売買契約書がそれぞれ必要になります。

 

⑧中古住宅の販売証明書~中古住宅の場合

中古住宅を購入する場合は、中古住宅の販売証明書が必要です。

 

⑨住宅ローンの金銭消費貸借契約書

住宅ローンを組む方は、住宅ローンの金融消費貸借契約書が必要です。

 

⑩フラット35に適合していることを証明する書類

住宅ローンを組まない方は、フラット35に適合していることを証明する書類が必要です。これは耐震性能を確認するためです。

 

すまい給付金の申請の流れ

新築や中古、また住宅ローンの有り無しによって用意する書類が違うことが分かりました。では実際に書類を集めて申請するまで、どのような流れになるのでしょうか。

 

①引っ越し前に課税証明書を取得する

引っ越し前に課税証明書を取得します。これは転出届を提出する際に、一緒に取っておくと良いでしょう。

 

②引っ越しが完了したら住民票を取得する

引っ越しが完了したら、住民票を取得しましょう。住民票がないと登記簿謄本も取得できないため、早めに市役所に取りに行くのがおすすめです。

 

③すまい給付金の事務局に書類を提出する

書類がそろったら、すまい給付金の窓口に直接もしくは郵送で提出しましょう。住宅関連の民間会社が窓口になっていることもあり、これはすまい給付金のホームページで調べることができます。

 

すまい給付金はいつもらえる?

では、実際に給付金が振り込まれるのはいつ頃になるのでしょうか。

 

申請から3~4か月後

申請から3~4か月後になります。コロナで事務局の人員を減らしているため、通常より振り込まれる時期が遅くなっています。

また書類に不備があれば事務局から電話が来るようになっていますが、電話がなく4か月以上経っても振り込まれない場合は事務局に連絡しましょう。

 

給付金額が決まる3つの要素

では、実際に振り込まれる金額はどのように決まるのでしょうか。ここでは具体的な給付金額の決まり方をご紹介します。

 

①住宅ローンの有無

まずは、住宅ローンの有り無しで年収の基準が決まります。なお住宅ローンを組まない場合、50歳未満の方は給付金を受け取ることができません。

 

②収入

年収によって「給付基礎額」が決まります。この給付基礎額が、給付金額を決める元となります。

また給付基礎額は、年収と、年収に応じて決まる都道府県税の所得割額を用いて決定します。

 

③持ち分割合

ペアローンなど夫婦で住宅ローンを組んでいる場合、持ち分割合を掛け合わせて給付金額が決まります。

たとえば、フルローンで登記上の持ち分割合を夫:妻=4:1にして住宅ローンを組んでいる場合、夫がもらえる金額は給付基礎額×5分の4、妻がもらえる金額は給付基礎額×5分の1になります。

 

対象者の条件

昨年末までに契約し、今年の12月末までに入居できる人であれば申請できるすまい給付金。そのほか給付対象者となる条件はあるのでしょうか。

 

自分名義で購入した家に自分で住む人

まず前提として、自分名義で購入した家に自分で住む人が対象になります。つまり、親名義などで家を購入する場合は適用されないということです。

 

収入が一定額

目安として、個人の年収が775万円以下の人が対象になります。しかし、家族を何人養っているかなど扶養条件などで、この額より年収が多い場合でも対象になる場合があります。

 

住宅ローンを利用しない人は50歳

住宅ローンを組んでいない場合、50歳以上の方が給付の対象になります。

 

対象となる家の条件

給付対象となる家にも条件があるので、見ていきましょう。

 

対象となる家の面積が40㎡に緩和

ー家の面積に条件はありますか?

以前は50㎡以上が対象となっていましたが、40㎡に緩和されました。

ただ、40㎡以上でも対象となるのは以下の期間に契約した方のみとなります。

注文住宅の場合:令和2年10月1日~令和3年9月30日

分譲・中古住宅の場合:令和2年12月1日~令和3年11月30日

 

個人間売買は給付対象外

ーそのほかなにか条件はありますか?

中古住宅の場合、宅地建物取引業者を通さなければ給付対象になりません。つまり、個人間売買での住宅取得の場合、給付されないということです。

 

ーなぜ個人間売買だと給付されないのですか?

消費税が課税されないからです。すまい給付金制度は消費税増税の負担を減らすために始めたものですので、課税されない場合は対象外になります。

 

申請での注意点

申請するにあたり、どんなことに気を付ければよいのでしょうか。ここでは申請するうえでの注意点をご紹介します。

 

登記簿謄本の有効期限は3か月ー申請するにあたって気を付けるべきことを教えてください。

登記簿謄本の原本を取得したら、早めに提出しましょう。登記簿謄本の有効期限は3か月。この期間を超えると自分で再取得しなければいけないため、時間と手間がかかってしまいます。

 

住民票にマイナンバーを記載しない

ー書類を書く上での注意点を教えてください。

住民票にマイナンバーを記載すると受け付けてもらえないので、気をつけましょう。

 

課税証明書は入居する時期によって必要な年度が変わる

ー書類を準備する際の注意点を教えてください。

住民税の課税証明書は入居する時期によって必要な年度が変わるので、注意が必要です。今年は6月までなら令和3年度、7~12月の間は令和4年度のものが必要になります。

 

ーなぜ時期によって違う年度のものが必要になるのですか?

入居時期に対し、最新の収入状況を提出するためです。住民税は前年の収入をもとに計算されており、5月ごろに税額が決定し、6月から徴収が開始されます。そのため住民税が決まる時期に合わせて、必要になる課税証明書も変わるのです。

 

ー課税証明書は引っ越し前に取得すべきですか?

基本的に課税証明書は引っ越し前の市役所で取得するため、市町村をまたいで引っ越しする場合は、転出届と一緒に取得するのが良いでしょう。

 

共同名義で購入の場合はまとめて申請を

ーそのほか申請でのアドバイスはありますか?

共同名義で家を購入して給付金をもらう時は、すべての書類を2部ずつそろえるのは面倒なので「まとめて申請」という制度を使いましょう。住民票、登記簿、契約書については1枚で2人の名前を記載するため、代表者1人の提出でOKです。

 

まとめ

この記事ではすまい給付金についてご紹介しました。すまい給付金の実施期間が終わりましたが、引き渡し期限は延長されるためまだ申請できる点がポイントです。

引っ越し後はバタバタするため申請が面倒ですが、先延ばしにすると期限切れになってしまうこともあります。プロのワンポイントアドバイスを参考に、準備を進めていきましょう!

 

 会社名  FPサテライト株式会社
 代表取締役社長  代表取締役 町田 萌
 所在地  〒104-0061 東京都中央区銀座6-6-1銀座風月堂ビル5F
 電話番号  03-6386-0216
 設立  2018年 4月10日
 事業内容  ・ ライフプラン及びマネープランの設計に関するコンサルティング

 ・地方移住に関するコンサルティング

 ・ 記事及び書籍等の執筆、出版及び販売

 ・通信教育、セミナー及び各種講座の企画及び運営及び受託

 ・企業の資金調達、資産運用等に関するコンサルティング

 ・ 前各号に附帯又は関連する一切の業務

 公式サイト  https://fpsatellite.co.jp/