二世帯住宅での暮らしって?経験談やおすすめの間取りを建築家にインタビュー
夫婦と親世代が一緒に暮らす二世帯住宅。共働き世帯の増加や待機児童問題などを背景に推奨されていますが、嫁姑問題などに不安を覚える方も多いでしょう。
この記事では、二世帯住宅で暮らすメリット・デメリットやおすすめの間取りを建築士の本田さんにインタビュー!二世帯住宅での暮らしも経験された‘‘二世帯住宅のプロ”ならではの視点から語っていただきました。
お話を伺った方
ラナ設計 本田 早織(ほんだ さおり)さん
【資格】2級建築士、住宅収納スペシャリスト
二世帯住宅で暮らすメリット3つ
親世代と暮らす二世帯住宅は、義父母とよい関係を築けるか不安な面がある一方、子育てに協力してもらえるなどの良さもたくさんあります。ここでは二世帯住宅で暮らすメリットをご紹介します。
子どものコミュニケーション能力が上がる
ー本田さんは二世帯住宅を経験されたのですか?
そうですね。結婚した当初は義父母と同居し、子どもが生まれてからは同じ敷地内に2棟ある完全分離型の二世帯住宅に住んでいます。
ーまず1つ目のメリットを教えてください。
娘が意識的に声質を変えて義父母と話している姿を見て、子どものコミュニケーション能力が上がると感じました。幼いころからおじいちゃん・おばあちゃん世代と話すことで、年配の方とコミュニケーションを取る技術が自然と身につくのだと思います。
子育てや動物を飼う際の負担が減る
ー2つ目のメリットを教えてください。
義父母に子育てを手伝ってもらえることと、動物を飼う際の負担を減らせることです。子どもが小さいときに少し息抜きをしたい場合でも、夫に任せるのは不安という方も多いのではないでしょうか。義父母であれば子育ての経験があるため、安心して子どもを任せられます。
二世帯住宅で義父母と暮らすことで気軽に子育てを任せることができ、急な仕事の際もスムーズに対応できました。
ー動物を飼う際の負担も減らせるのでしょうか?
私の家では猫を飼っており、旅行の際は義父母に預けています。核家族で義父母が離れたところに住んでいると、子育てやペットの世話はお願いしづらいと感じるもの。二世帯住宅に住むことで心理的にも距離が近くなり、ちょっとした相談もしやすくなります。
災害や急病でもお互いに安心できる
ー3つ目のメリットを教えてください。
地震などの災害時や救急車を呼ぶような緊急事態の際、二世帯住宅の場合はすぐに安否を確認できることです。遠くに住んでいても電話などで安否確認はできますが、相手の状況を言葉から詳細にくみ取ることは難しいと感じます。近くで実際に顔を見て状況を確認することで、お互いに安心できるのです。
二世帯住宅で暮らすデメリット2つ
メリットがたくさんある一方、二世帯住宅ならではのデメリットも。二世帯住宅のメリット・デメリットどちらも見極めて考えてみましょう。
プライバシーがない
ー1つ目のデメリットを教えてください。
二世帯住宅で風呂やトイレが共用の場合、最初はプライバシーがないことにストレスを感じるでしょう。まだ義父母とのコミュニケーションを円滑に取れていない段階だと共用スペースの使い方で気を遣い、精神的に負荷がかかりやすいと思います。
ー同居されていた際、どんな時に不安を感じましたか?
気分や体調が悪い時ですね。自分の部屋に居たいけれど、部屋から出てこないことで義父母から心配されるのでは、と感じて余計に不安になっていました。
ある程度時間が経つと義父母とコミュニケーションを取れるようになり、完全同居型の二世帯住宅にも慣れていきました。
家事の役割分担が難しい
ー2つ目のデメリットを教えてください。
二世帯住宅では家事の役割分担を家族で決めておかないと、キッチンの使い方などでもめる可能性があります。二世帯住宅での暮らしが始まる前に、料理や洗濯、掃除などを誰がどのような頻度で担当するのか、家族全員で話し合っておきましょう。
夫婦に子どもがいる場合、子どもが大きくなって「ママ、〇〇食べたい!」と意思表示をする年齢になると、子ども中心の献立になることが多いようです。その場合、料理の担当は自然とお嫁さんのほうになるため、料理面での役割分担の不安は軽減されると思います。
二世帯住宅の間取りは3種類!特徴は?
二世帯住宅での不安は、間取り次第で解消できるものもあります。二世帯住宅の間取りは、完全同居型・部分同居型・完全分離型の3種類。それぞれにどのような特徴があるのでしょうか。
完全同居型
ー完全同居型の二世帯住宅とは?特徴を教えてください。
個室を除くすべてのスペースが共有になる二世帯住宅の間取りです。結婚当初から夫の生家で義父母と同居している方は、子どもが生まれたり建て替えしたりするタイミングで完全同居型の二世帯住宅を建てる方が多いと感じます。
ー同居にあまり抵抗のない方がする間取りなのでしょうか?
そうですね。二世帯住宅の暮らしに慣れている方はもちろん、40代の夫婦で親世帯が心配という理由から完全同居型の二世帯住宅を選ぶ方もいます。
部分共用型
ー部分共用型の二世帯住宅とは?特徴を教えてください。
お風呂やキッチン、玄関などの一部分を共用スペースとする間取りで、建て替えのタイミングでキッチンを付け足すなど、暮らしていくうちに部分共用型の二世帯住宅になるケースが多いです。
ー部分共用型の二世帯住宅を建てる上で、何かポイントはありますか?
新築の二世帯住宅であれば玄関のみを共用にし、キッチンやお風呂などは2つずつ作るのがおすすめです。何をどこまで共用にするかは、コスト面もふまえてしっかり家族で話し合いましょう。
お風呂を共用にするならばシャワー室を作ったり鉢合わせしない動線にするなど、共用スペースにひと工夫加えることもおすすめです。
完全分離型
ー完全分離型のの二世帯住宅とは?特徴を教えてください。
玄関も含めてすべての住空間が分かれる二世帯住宅の間取りです。夫婦がアパート・マンション暮らしを経て義父母と住むことになった際に、完全分離型の二世帯住宅を選ぶ傾向があります。同じ敷地内に夫婦の家と義父母の家が2軒あったり、家同士が廊下でつながっているパターンが多いです。
ー完全分離型の二世帯住宅でおすすめできるポイントはなんですか?
二世帯住宅は同じ敷地に2軒の家があるため、片方の家が余ったら賃貸として貸し出せることです。親世代が亡くなって1棟余ってしまった場合、貸し出すことで利益になります。
建築費用は間取りタイプによって異なる
ーそれぞれの建築費用に差はありますか?
二世帯住宅の共用部分が多いほど、建築費用は安く抑えられます。一生ものなので、何をどこまで共用スペースにするのかは家族で話し合って決めましょう。
間取りを考える時に気を付けること
どんな二世帯住宅の間取りタイプでも、部屋の配置や動線を工夫することは大切です。完全同居型・部分共用型・完全分離型の二世帯住宅における注意点をご紹介します。
玄関を一緒にする場合、動線を工夫する
ー完全同居型や部分共用型の二世帯住宅を建てる際に注意すべき点を教えてください。
玄関を一緒にする場合、動線に注意しましょう。親世代と夫婦の生活空間を分けたものの、玄関から親世帯のリビングを通らないと夫婦の部屋へ行けないというケースもあります。どの部屋を通って自分たちの部屋へ行くのか、動線を確認して二世帯住宅をつくっていきましょう。
生活音を考えて寝室の位置を決める
ー二世帯住宅を建てる際、部屋の位置で気を付けるべき点はありますか?
2階建ての場合は生活音にも気を付けて部屋の配置を決めましょう。義父母の寝室の真上に子ども部屋を配置すると、足音などがうるさい可能性も。家族みんなが気持ちよく住める二世帯住宅をつくることが大切です。
親世帯の部屋は寝室とリビングの2つを用意する
ー親世帯の部屋について、なにか注意すべき点はありますか?
親世帯の部屋は、寝室とリビングの2部屋をつくりましょう。親夫婦の部屋が1つしかない場合、常にお互いが同じ空間にいるのは息が詰まるもの。配慮して2部屋作っておくことで、親夫婦もストレスなく暮らせます。
2部屋作る際は、どちらか片方は和室にしておくとよいでしょう。親世帯が亡くなった後もそのまま仏壇を置いて仏間にしたり、お客さんが来た際の客間にすることもできます。
玄関の向きに注意する
ー完全分離型の二世帯住宅を建てる際に気を付けることはありますか?
玄関の向きを工夫するとよいでしょう。私が住んでいる二世帯住宅の場合は、玄関を開けると義父母の家の勝手口がある間取りにしています。
ーなぜ玄関の位置が大切なのでしょうか?
玄関を同じ向きにすると、親世帯の家に来客があった際にすぐに気づくため、「お客さんにあいさつに行くべきかな?」と考えなければいけません。玄関の向きをずらすことで相手の家にお客さんが来ていることすら気づかないため、余計な心配をせずに生活できるのです。
二世帯住宅について、家族で話し合っておくべきこと
義父母も交えての二世帯住宅の家づくりは、打ち合わせから緊張してしまいますよね。一生の買い物なので、家族全員でコミュニケーションを取りながら家づくりを進めることが大切です。
二世帯住宅について話し合っておくべきことや家づくりでのポイントをご紹介します。
義父母とコミュニケーションをとる
ー二世帯住宅を建てる際に大切なことは何ですか?
義父母となんでも話せる関係になっておくことです。「旦那さんに伝えてもらうから」といって義父母とあまり話さないうちは、家づくりがうまくいく可能性は低いです。
夫に伝言を頼んでも、言いたかったことを100%同じ内容で義父母に伝えてくれるとは限りませんし、最悪の場合、まったく違う意味で伝わってしまうこともあります。これから一緒に暮らしていく以上、家づくりの段階からしっかり意見を交わせるようになることが大切です。
家事分担を決める
ー二世帯住宅を建てる際、家族で話し合っておくべきことはありますか?
家事の分担を家族全員で話し合っておきましょう。キッチンを共用スペースにする場合は、料理の担当が夫婦になったとしても、義父母も少し料理ができるように配慮して設計するのがおすすめです。
畳をつけるか確認する
ー二世帯住宅を建てる際に気を付けることはありますか?
義父母が畳のある部屋で暮らしていたかを確認しましょう。床に座って生活していた人がいきなり椅子に座る住環境になるのは、意外とストレスがかかります。二世帯住宅をつくる際は、どうしても義父母は遠慮してしまうもの。家を建てる夫婦側から配慮することで、家族みんなが暮らしやすい二世帯住宅になります。
一度同居するのもおすすめ
ーどうすれば義父母とコミュニケーションを取れるようになりますか?
可能ならば、短い期間でも義父母の家で一緒に住んでみるのがおすすめです。コミュニケーションが取れるだけでなく義父母の生活パターンもわかるので、同居のハードルが低くなります。
実際にどんな暮らし?経験談を聞いてみました
二世帯住宅での暮らしはどのようなものなのでしょうか?完全同居型・完全分離型の二世帯住宅どちらも経験された本田さんに、感想を聞いてみました。
近くにいる安心感
ー二世帯住宅での暮らしでよかったことを教えてください。
子育てに協力してもらえることです。急な子どものお迎えや子どもが風邪をひいたときなども対応してもらえるため、安心して夫婦で働くことができました。
子どもが巣立つと、義父母の体調などが心配になりました。長い間二世帯住宅で一緒にいると、義父母の少しの異変にも気づけるようになるものです。このように、自分たちの家がお互いに安心できる環境になったことも、二世帯住宅の魅力だと思います。
最初はお互いに我慢が必要
ー二世帯住宅での暮らしで大変だったことを教えてください。
最初は我慢することが多く、ストレスを感じることもありました。しかし、娘に子どもができていざ自分が姑の立場になると、義母側も気を遣っていたのだろうと気づきました。きっと私が息苦しい思いをしていた分、義父母もまた我慢を強いられていたのでしょう。
育ってきた環境や生活習慣が異なる家族は、一緒に住むだけではじめから‘‘家族”になるわけではありません。長い時間をかけてお互いに信頼関係を築き、少しずつ家族になっていくのではないでしょうか。
これからの二世帯住宅での暮らし
平均寿命が伸びて定年も延長されている現在、親世代の働き方もかなり変化しています。今後、二世帯住宅での暮らしはどのように変わっていくのでしょうか。
おすすめは完全分離型
ー二世帯住宅でおすすめの間取りタイプを教えてください。
完全分離型か、玄関部分を共有する部分共用型の二世帯住宅がよいと思います。予算に余裕があるならば、完全分離型にするほうが余った際に貸し出せるためおすすめです。
親世代も働く時代
ー今後、二世帯住宅での暮らしはどのようなものになりますか?
平均寿命が伸びるにつれて定年も延長され、現在は親世帯も働いている方が多い時代ですよね。今後は夫婦と親世帯がお互いに働きながら、家事を両立させていく暮らし方が増えるのではないでしょうか。
二世帯住宅に住む私の知人は、夫婦と義母が働きながら曜日ごとに家事を担当しているそうです。家事を担当する日は早く帰り、担当でない日に残業して仕事を片付けることで仕事と家事を両立させています。
ー二世帯住宅での暮らし方も、日々変化しているのですね!
そうですね。一言で二世帯住宅といっても、暮らし方は家族によってさまざま。どんな暮らしにしたいか、ライフプランも織り交ぜながら家族で話し合うことが大切です。
まとめ
この記事では、二世帯住宅の間取りタイプや家づくりのポイントをご紹介しました。玄関の位置や間取り・動線の工夫など、二世帯住宅での暮らしを経験しないとわからないような情報もたくさん詰まっていましたね!
育ってきた環境や生活習慣が違うため、二世帯住宅での暮らしに不安を覚えるのは当然。家族で少しずつコミュニケーションをとりながら、楽しく家づくりをしていきましょう。
会社名 | ラナ設計 |
代表 | 本田早織 |
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