住宅取得資金贈与の失敗例は?ポイントはタイミング!対処法をご紹介

2022年7月12日

住宅購入の際、親や親族から贈与を受ける方も多いのではないでしょうか。資金贈与には贈与税が発生しますが、住宅取得資金贈与については特例を利用することで一部非課税になりますが、中には贈与に失敗してしまった…というケースも。お得な住宅取得資金贈与の非課税制度ですが、贈与のタイミングを間違えると適用条件を満たせず、贈与に失敗することもあるため注意が必要です。

この記事では、住宅取得資金贈与のタイミングについて解説!住宅取得資金贈与でありがちな失敗例や対処法についてもご紹介しているため、贈与を受ける前にぜひ参考にしてみてください。

 

住宅取得資金贈与の特例について

一般的に、1年間の間で受け取った贈与額に応じて税金が課されます。住宅取得資金贈与の特例とは、住宅取得やリフォームに充てる費用として父母や祖父母から贈与を受けた際、贈与税の一部が非課税となる制度のことです。

もともと住宅資金贈与の特例は2021年12月31日まででしたが、2021年末に発表された2022年(令和4年)度の税制改正大綱で、2年間延長されました。

住宅取得資金贈与の特例は2022年1月1日から2023年12月31日までの間に受けた贈与が対象となります。非課税限度額も定められており、省エネ等住宅の場合は1,000万円、それ以外の住宅は500万円です。

そのほか、住宅取得資金贈与の特例に関する対象要件や申告方法の手続きなどは、以下の国税庁の公式サイトよりご確認ください。

(参考:直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税/国税庁

 

住宅取得資金贈与で失敗しない!押さえておきたい3つのタイミング

住宅取得資金贈与の特例で失敗しないためには、以下3つのタイミングを押さえることが大切です。タイミングが早かったり遅すぎたりすると、贈与税が非課税とならず、贈与に失敗してしまうため注意しましょう。ここでは、住宅取得資金贈与の特例を利用する際に気をつけたい3つのタイミングについて解説します。

 

住宅取得資金贈与を受けるタイミング

住宅取得資金贈与の特例を適用するためには、住宅購入前に贈与を受ける必要があります。居住開始後に資金贈与を受けても、非課税特例の対象とはなりません。
よくある失敗例として気を付けておくべき点は、贈与が早すぎても特例が適用されないこと。特例が適用されるには、贈与を受けた年から翌年3月15日までに住み始める必要があります。

たとえば、住宅取得資金贈与を年末に行ったとしましょう。その場合、贈与されてから約3ヶ月の間に新居に住み始める必要があります。よって、3か月間で住宅の購入から各種手続き、引っ越しまで終えなくてはなりません。注文住宅の場合はさらに時間がかかるでしょう。

「年末に住宅取得資金贈与を受けたが新居が決まっていない」というケースだと、慌ただしくなるので、注意しましょう。

 

居住開始のタイミング

住宅取得資金贈与の特例を利用するために、新居に住み始めるタイミングも大切。前述したとおり、原則として贈与を受けた年の翌年3月15日までに新居に住み始める必要があります。

いつ家が完成して住み始められるかを決めてから、逆算してスケジュールを立てて贈与を受けることで贈与に失敗することはないでしょう。

しかし、何らかの事情によりどうしても居住開始が3月15日までに間に合わないケースもあると思います。

さきほど「原則として贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住を開始する必要がある」と記載しましたが、間に合わなくても、12月31日までに居住する見込みがあれば適用されるのです。12月31日が最終的な期限ですので注意しましょう。

 

贈与税申告のタイミング

贈与税の申告も、贈与を受けた年の翌年3月15日となっています。居住地を管轄する税務署に、贈与税の申告書や住宅取得の契約書の写しなどの書類を期限までに提出しなくてはいけません。

住宅取得資金贈与は、通常の贈与税申告よりも書類が多いため、用意に時間がかかります。申告期限に慌てて贈与税を申告し、不備があって失敗してしまった…ということがないよう、スケジュールに余裕を持って進めるとよいでしょう。

 

>>住宅取得資金贈与の特例が改正!プロにインタビューした記事はこちら

 

住宅取得資金贈与の特例で失敗しない!注意が必要な人を事前にチェック

住宅取得資金贈与の特例は節税になるメリットがある一方、ほかの非課税制度を利用する場合は気をつけるべきポイントもあります。

住宅取得には大きな費用がかかるため、国の制度は有効活用したいもの。ここでは、住宅取得資金贈与の特例で失敗しない、注意すべき点を2つご紹介します。

 

親から不動産を相続する可能性がある人

親から不動者を相続する場合、「小規模宅地等の特例」が受けられます。これは、一定の要件を満たした場合に、相続税の課税価格に算入すべき価額を減額できる特例です。

住宅取得資金贈与の特例を利用すると、小規模宅地等の特例が受けられなくなってしまいます。つまり「住宅取得資金贈与の特例」「小規模宅地等の特例」の両者を天秤にかけ、節税できる制度を選んだほうがお得です。

しかし、小規模宅地等の特例の減額計算は専門的な知識が必要なので、税理士等の専門家に相談するとよいでしょう。

 

住宅ローン減税制度を併用する人

住宅ローン減税制度は、住宅取得やリフォームのために住宅ローンを組んだ際に、一部を所得税から控除する制度。住宅取得等資金贈与の非課税の特例は住宅ローン減税制度と併用できますが、お得にならない場合もあるのです。

また、住宅ローン減税制度は「毎年末の住宅ローン残高」または「住宅の取得対価」のどちらか少ないほうの金額の0.7%が、所得税の額から控除されます。

この住宅の取得対価は、住宅と土地の購入費から贈与を受けた額を引いた数字です。住宅と土地の購入費が5,000万円で、1,000万円の贈与を受けた場合は、住宅の取得対価は4,000万円となります。

仮に住宅ローン残高が3,000万円だとすると、減税制度の対象となるのは住宅ローン残高です。

所得税が関わってくるので、具体的にどのようにするのが得とはいい切れませんが、住宅ローン減税制度を重視する場合は気をつけるとよいでしょう。節税に関しても、税理士に相談するのがおすすめです。

 

住宅取得資金贈与の特例でよくある失敗と対処法

住宅取得資金贈与の特例にはさまざまな要件があります。この要件を満たしていなければ、贈与税が非課税にならないので注意しましょう。ここでは、住宅取得資金贈与の特例でよくある失敗と対処法をご紹介します。

 

失敗例①贈与を受けるタイミングが早すぎた

住宅取得資金贈与の特例を受けるためには、贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与税の申告および居住を開始する必要があります。贈与を受けるタイミングが早すぎると特例を適用できないといった失敗もありますので、注意が必要です。

しかし、何らかの事情により住宅取得資金贈与のタイミングが早すぎてしまった場合は、一度贈与された資金を返すとよいでしょう。返金することで、住宅取得資金贈与が行われていないことを主張できます。

そして改めて年明けに贈与すれば、住宅取得資金贈与の特例を受ける期限を伸ばせます。後日正式に贈与する際は、贈与契約書を作成することをおすすめします。贈与契約書があれば、確実に贈与があったことを税務署に証明できます。

 

失敗例②住宅取得後に贈与された

住宅取得等資金贈与の特例における失敗例として、住宅取得後に贈与されたケースというのも挙げられます。住宅取得資金贈与は原則、住宅の取得前に贈与しないと適用されません。つまり、住宅取得後に贈与を受けても、贈与税は非課税にならないのです。

もし住宅取得後に贈与を受けた場合は、ほかの非課税制度をうまく利用して節税するとよいでしょう。たとえば、暦年課税で受け取る方法があります。

これは、年間110万円までの贈与は非課税となる仕組みを利用した方法です。1,000万円を贈与したいのであれば、毎年100万円を10年間にわたって贈与することで、贈与税を発生させずに1,000万円を贈与できます。

 

失敗例③手付金支払いのタイミングで贈与する

住宅購入時には、契約を担保とするための手付金を支払います。この手付金は売買代金の5〜10%が相場で、場合によっては高額になるケースもあるでしょう。このタイミングで贈与を受けるのも、失敗する可能性があるため注意が必要です。

しかし、この手付金の支払いに使うため、あるいは手付金支払いのタイミングで贈与を受けるのはおすすめできません。手付金は、住宅ローンの融資が下りる前に支払います。つまり、手付金を支払う段階では、住宅購入契約が成立していないのです。

仮に手付金支払いのタイミングで贈与を受け、その後住宅購入がキャンセルになった場合、新たな物件を探し直さなくてはいけません。特例の期限である「贈与を受けた年の翌年3月15日」に間に合わせるのは大変です。

贈与のタイミングは、住宅購入の支払い直前がよいでしょう。

 

失敗例④所得税の合計所得金額が2,000万円を超えている

住宅取得資金贈与の特例を受ける際の適用要件には、贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下(床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は、1,000万円以下)とされています。

所得金額は給与所得額だけではなく、事業所得や不動産所得などの所得を加味した金額となり、すべての所得を合わせると特例が使えなかった…という失敗もあるので注意しましょう。

 

非課税額内でも申告は必要

住宅取得等資金贈与の特例を利用した結果、贈与税額がすべて非課税であったとしても、贈与税の申告は必要です。申告を行わないと住宅取得資金贈与の特例が適用されず、贈与税が発生してしまう恐れもあるため注意しましょう。

贈与税の申告は、贈与された年の翌年2月1日から3月15日までの間に行います。贈与税の申告で不安な方は、税理士に相談してみてください。

 

まとめ:住宅取得資金贈与は失敗しなければ有効な制度!タイミングに気をつけて利用しよう

住宅取得資金贈与の特例をきちんと利用するために、贈与するタイミングには気をつけましょう。贈与のタイミングを間違えると、贈与税が非課税とならず失敗してしまうため、必ず住宅取得前に贈与するよう注意が必要です。

そして特例を受けるためには、贈与を受ける人の所得金額や床面積などの要件がある点にもお忘れなく。国税庁の公式サイトで確認し、それでも不安な方は税理士に相談するとよいでしょう。