団体信用生命保険は月々いくら?選び方もプロが解説!

2022年8月10日

住宅購入の際に加入する団体信用生命保険。「月々いくらの負担になる?」「団体信用生命保険の選び方は?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

今回は、金融機関で11年の勤務経験を持つFPの枡井由佳里先生にインタビュー!団体信用生命保険の特徴や選び方、月々の返済額などをくわしくお聞きしました。

 

お話しを伺った方

枡井 由佳里(ますい ゆかり)さん


【資格】

AFP、証券外務員、年金アドバイザー、クレジットカードアドバイザー®︎、住宅ローンアドバイザー

【経歴】

金融機関で11年間、保険を中心としたファイナンシャル プランナーとして活躍中。保有資格はクレジットカードアドバイザーに加えて、年金アドバイザー、シニアライフコンサルタントなど。お金全般に関する知識が豊富で「お金を守る専門家YouTuber」として身近なお金に関するアドバイスを発信中。

 

団体信用生命保険とは?

団体信用生命保険という言葉はよく耳にする一方、くわしい保険の内容については知らない方も多いのではないでしょうか。

団体信用生命保険の特徴や保障範囲についてお聞きしました。

 

団体信用生命保険は住宅ローンに特化した保険

ー団体信用生命保険とはどのような保険なのでしょうか?

団体信用生命保険とは、住宅ローンを契約している方が死亡もしくは高度障害になった場合に、残りの住宅ローンを保険会社が支払うというものです。

 

生命保険との違いは?

ー生命保険と団体信用生命保険では、どのような点が異なるのでしょうか?

生命保険は保障範囲内(死亡、事故、病気など)で起きた事象に対して保険金がもらえる仕組みであるのに対し、団体信用生命保険では死亡もしくは高度障害になった場合でも保険金がもらえるわけではありません。

団体信用生命保険は、万が一の時に住宅ローンの返済を肩代わりしてくれる保険と認識しておきましょう。

 

団体信用生命保険の保障範囲

ー団体信用生命保険の保障範囲とは?

一般的な団体信用生命保険では、契約者が死亡もしくは高度障害になった場合に適用されます。

 

ー高度障害とはどのような状態を指しますか?

目が見えない、寝たきり、流動食しか食べれないなど、自分一人で生活できない状態を指します。高度障害に関しては明確な基準が定められており、団体信用生命保険だけでなく生命保険にも同じような基準が適用されています。

 

保険料は月々いくら?加入する条件も解説

住宅購入の際は建築費用以外にも、火災保険などの住宅を守る保険やリフォーム費用など、月々必要になるお金のことも考えながら資金計画を立てることが大切です。

団体信用生命保険に加入する際、月々の保険料はいくらになるのでしょうか。加入する条件とともに解説します。

 

保険料は月々の住宅ローンの金利に含まれている

ー団体信用生命保険は0円という言葉もよく耳にします。団体信用生命保険に関する月々の保険料はかからないのですか?

いえ、保険料が0円というわけではありません。保険料は住宅ローンの金利に組み込まれているため、実際のところ月々いくらかの保険料を支払っていることになります。

 

ーなるほど。団体信用生命保険の保険料は、月々の住宅ローン金利に含まれて引き落とされているのですね!

そうですね。

住宅ローンを月々4万円支払っている場合、ローンとしての4万円とは別に、団体信用生命保険分として420円ほど別で引き落とされます。大きな金額ではありませんが、決して保険料が無料というわけではありません。

 

ー団体信用生命保険の保険料も、金利の影響を受けるのでしょうか?

はい。借りている金利が上がってしまった場合、団体信用生命保険の保険料も少し高くなります。

団体信用生命保険は金利に組み込まれているため、金利の変動とともに月々で引かれる保険料も変わると考えてよいでしょう。

 

団体信用生命保険加入の条件は、健康であること

ー団体信用生命保険に加入できる条件とは?

団体信用生命保険も通常の生命保険と同様、自分の健康状態を保険会社に伝える「告知義務」があります。がんや持病を抱えて治療を受けている場合、加入は難しいでしょう。

最近多い病気として、うつ病も挙げられます。病気と聞くとがんや脳卒中などの大きな病気を想像される方が多い一方、精神的な病気の場合でも加入が厳しいといわれています。

 

特約付き団体信用生命保険とは

団体信用生命保険には、特約付きと呼ばれるものも存在します。特約付き団体信用生命保険とはどのような保険なのでしょうか。

 

三大疾病になったとき保障される団体信用生命保険

ー三大疾病団体信用生命保険という保険を聞いたことがあります。三大疾病とはなんですか?

三大疾病とは「がん」、「心疾患」、「脳血管疾患」といった3つの病気を指します。日本人の死因上位を占める病気のことです。

 

ー三大疾病団体信用生命保険とはどのような保険ですか?

三大疾病の「がん」、「心疾患(心筋梗塞など)」、「脳血管疾患(脳卒中など)」になった場合、住宅ローンが免除される保険になります。

がんはステージ3以上(細胞の中に浸透するがん)と診断されたときに免除されますが、心筋梗塞や脳卒中の場合は各社で対応が違ってきます。

 

ー住宅ローン免除の条件が各社で変わるのですか?

はい。心筋梗塞もしくは脳卒中と判断されて入院・手術をしたら免除になるケースのほか、60日以上の入院が免除の条件となるケースもあります。

 

ー三大疾病団体信用生命保険でも、加入条件は通常のものと変わらないのでしょうか?

はい。三大疾病団体信用生命保険の場合でも健康状態の告知義務があるなど、基本的な条件は変わりません。ただ、通常の生命保険と同じく「免責期間」がある点に注意しましょう。

 

ー免責期間とはなんですか?

一般的ながん保険では通常、保険加入時から90日間は免責期間となるため、その間にがんと診断された際に保険金が下りることはありません。

三大疾病団体信用生命保険も一般の生命保険と同様に、免責期間が設けられています。

 

保障範囲が広がる分、金利も上乗せされる

ー通常の団体信用生命保険との違いは、病気に関する保障の有無と考えてよいでしょうか?

そうですね。一般の団体信用生命保険より保障範囲が広がる分、金利が上乗せされる点も大きな違いだと思います。

 

ー特約付き団体信用生命保険の場合、金利はどのくらい上乗せされるのですか?

多い時で0.3%ほど金利が上乗せされます。金利がどれくらい上乗せされるかは、各銀行によって異なります。

 

ー金額として大体どれくらい変わってくるのでしょうか?

変動金利(0.52%)で4000万円の住宅ローンを組み、35年かけて返済するケースで考えてみましょう。

特約を付けない団体信用生命保険の場合、月々の支払いは約10万4千円(変動金利が0.52%から変わらない想定)。支払い総額が約4375万円になります。この375万円というのが、金利の部分です。

 

ーなるほど。特約を付けるとどれくらい変わるのでしょうか?

金利が0.3%上乗せされる特約付き団体信用生命保険の場合は、月々の支払いが5千円増えて10万9千円。月5千円となるとあまり大きな金額ではありませんが、支払い総額は4602万円。利息分が602万円になり、通常の団体信用生命保険より220万円ほど多く利息を支払うことになります。

この220万円が、三大疾病の保障に対して支払う掛け捨ての保険になります。

 

ー掛け捨てというのは、病気にならなかった場合も保障を付けた分のお金は返ってこないということですよね?

そうですね。掛け捨ての保険は保険料を安く押さえられる一方、特約付き団体信用生命保険は通常の保険より高い金利を支払わなくてはいけないため、割に合わないというケースもあります。

たとえば返済があと1年という時にがんを患い、通常より高い金利で2500万円ほど総額で支払っていたとしましょう。残りの500万円は免除となりますが、今まで支払った金額は返ってきません。

特約付きの団体信用生命保険はただ付ければよいというわけではなく、年齢や仕事の状況などを加味して考えることが大切なのです。

 

ーなるほどですね…ちなみに、途中から特約付き団体信用生命保険に切り替えることはできるのでしょうか?

いえ、途中で住宅ローンの借り換えをしない限りは、団体信用生命保険を切り替えることはできません。

 

団体信用生命保険はどう選ぶ?見極めるポイント

特約付きの団体信用生命保険と通常の団体信用生命保険の2種類あるなかで、どのように加入する保険を選べばよいのでしょうか。

団体信用生命保険を選ぶ際のポイントをお聞きしました。

 

病気になるリスクが高まる年齢の場合は付けたほうがよい

ー団体信用生命保険を特約付きのものにするかはどのように見極めればよいのでしょうか?

男性が住宅ローンを組むことが多いため男性メインでお話しすると、がんのり患率は60歳以降から急激に上昇しています。

若いときは比較的がんになりにくいため、20代の方が60~65歳で完済できるような住宅ローンを組む場合は特約を付けなくてもよいでしょう。

 

生活状況も加味して考える

ー年齢のほかに、特約をつけるかどうか見極めるポイントはありますか?

契約者の方の生活状況も加味して考えるとよいでしょう。奥さまが専業主婦であれば特約付きの団体信用生命保険にするほうがよいケースもありますが、共働きで夫婦どちらも一定の収入がある場合は、特約は要らないかもしれません。

 

ー夫婦でペアローンを組んでいる場合も特約は要らないのでしょうか?

そうですね。ペアローンの場合は借りる金額自体が少なくなることも多いため、住宅ローンを借りる期間そのものが短くなるケースもあります。

団体信用生命保険はあくまでも住宅ローンの残債を免除するものになるため、保障が一生涯続くわけではありません。住宅ローンの金額が少ない場合はがん保険などの生命保険に加入し、一生涯保障が続くものにするのもよいでしょう。

 

特約付き団体信用生命保険を選ぶ際の注意点

ー八大疾病の団体信用生命保険などもよく耳にします。特約付きのものを選ぶ際、何かポイントはありますか?

生活習慣病に関する保障も加わった特約付き団体信用生命保険では、一見広範囲に保障されるように見えるでしょう。しかし保険の概要についてまとめた約款を見てみると、住宅ローンが免除になる条件はかなり厳しいため、注意が必要です。

一例として糖尿病に関する保障のケースを挙げると、「足を切断されたら住宅ローンが免除になる」というものがあります。糖尿病で足を切断するリスクは一定数ある一方、果たして若い時に足を切断するまで糖尿病が悪化するのでしょうか。

特約付きの団体信用生命保険を選ぶ際は、保障範囲だけでなく免除になる条件も加味しながら考えることが大切です。

 

ー八大疾病の特約付き団体信用生命保険では、三大疾病のものより金利が多く上乗せされるのですか?

いえ、八大疾病団体信用生命保険の場合でも、三大疾病のものと金利はほぼ変わらないと考えてよいでしょう。それだけ給付されるケースが限られるとも考えられるため、特約付き団体信用生命保険を選ぶ際は保障範囲だけでなく給付される条件も確認することが大切です。

 

団体信用生命保険以外の保険も考える

ー団体信用生命保険のほかに、住宅購入の際に考えておくべき保険はありますか?

団体信用生命保険だけではカバーできないケースも多くあることに注意しましょう。

中でも団体信用生命保険では保障の対象外となるうつ病に関しては、20~50代の方が働けなくなる理由として最も多いといわれています。万が一働けなくなった場合でも生活できるよう、団体信用生命保険だけでなく他の保険についても加入しておくことが大切です。

 

ーなるほど。精神的な病気に関する保障についても考える必要があるのですね

はい。契約者の方が自営業や個人事業主、成果報酬型のお仕事をされている場合は、万が一働けなくなったケースを考慮して保険を決めることが大切です。

契約者の方がどの会社でどのような勤務体系かどうかでもかなり変わってくるため、自分のケースではどの保険がよいか見極める必要があります。

 

ーうつ病やストレスに関する相談は多いのでしょうか?

うつ病などの精神的な病気に対して世間一般に理解されるようになったため、数年でかなり増えた印象を持ちます。団体信用生命保険に加入できない代わりに、うつ病の方でも入れる団体信用生命保険のような生命保険があります。

金利は団体信用生命保険より高くはなりますが、万が一のときにしっかり備えられるためおすすめです。

 

ライフイベントごとに保険を見直すことが大切

万が一のときに備える保険は、住宅購入以外のタイミングでも見直すことが大切です。枡井さんがおすすめする、保険を見直すタイミングについてお聞きしました。

 

見直すべきタイミング①結婚・出産

ー保険を見直すタイミングはいつがよいのでしょうか?

結婚・子どもが生まれるタイミングで確認しましょう。子どもの学費や自分たちに万一のことがあった時に備えるため、独身時代の保険よりも手厚いものに加入し直す必要があるかもしれません。

 

見直すべきタイミング②子どもの独立

ーそのほか保険を見直すタイミングはありますか?

子どもが独立するタイミングで、年齢でいうと40~50代ごろになります。子どもが独立するタイミングで見直すべき保険は医療保険です。

子どもが巣立ってお金がかからなくなると、預貯金や老後の蓄えをある程度持っているケースが多いといわれています。金融資産を十分に持っていたり保険料があまりに高い場合は、保険が要らない場合もあるため医療保険は見直しておくとよいでしょう。

 

ーなるほど。余分な保険を外すのですね

そうですね。余分な保険を外すだけでなく、新たな保険についても考える必要があります。

40~50代になるとがんのり患率が上がるため、がん保険に新しく加入したり保険を見直すのがよいでしょう。

 

保険で重視すべきは費用対効果!

ー枡井さんが資金計画の相談を受ける上で気を付けられていることは何ですか?

一辺倒な回答はせず、お客さまの背景、ご家族の状況、ご主人に万一のことがあった場合に家に住み続けるのか実家に帰るのかなどを細かく確認しています。

保険を選ぶ際は費用対効果をいちばんに重視するため、各々の家族やライフスタイルに合った保険を選ぶようにアドバイスしています。

 

ー団体信用生命保険では、何もつけない方と特約をつける方どちらが多いのでしょうか?

特約付きの団体信用生命保険を選ぶ方が多い印象です。低金利の時代であるため金利の影響を受けにくいことや、ネット銀行が主流になってきたことが要因だと考えられます。

 

ーネット銀行が主流になることで、団体信用生命保険に加入しやすくなったのでしょうか?

そうですね。手軽に加入できるようになっただけでなく、ネット銀行では、ステージ1~2のがん(細胞に浸透していない上皮内がん)であっても保障されるものが増えています。そういった影響もあるため、団体信用生命保険に特約を付ける方がさらに増えているのでしょう。

自分のライフスタイルや年齢などを加味しながら団体信用生命保険を決めていくことが大切です。

 

まとめ

今回は団体信用生命保険の特徴や選び方などをお聞きしました。お金のプロならではの目線から、団体信用生命保険について学べましたね。

住宅購入だけでなく、さまざまなライフイベントにおいて考えなければいけない保険。ライフイベントごとに見直しながら資金計画を立てていきましょう!

 

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