生前贈与はするべき?相続との違いや注意点についてプロが徹底解説!

2022年9月7日

家づくりを考えはじめた際、親や親族から土地の生前贈与を受けるという方も多いのではないでしょうか。土地の生前贈与には一定の税金がかかるため、贈与を受ける前に事前に確認しておくことが大切です。

今回は土地の生前贈与と相続の違いについて、遊休地などの不動産問題を専門的に取り扱う株式会社KLCの小林さんにインタビュー!不動産のプロならではの目線から、土地の生前贈与や相続における注意点をお聞きしました。

 

お話しを伺った方

小林弘典(こばやし ひろのり)さん

 

生前贈与と相続の違いって?

そもそも生前贈与と相続にはどのような違いがあるのでしょうか。生前贈与と相続の概要についてお聞きしました。

 

生前贈与とは

ー生前贈与とはなんですか?

贈与者(財産を渡す人)が生きているうちに、受贈者(財産をもらう人)へ財産を渡すことです。相続の場合は亡くなった後に財産を分けるため、「特定の人に渡したい」という贈与者の意思が反映されにくいといわれています。

生前贈与の場合は生きているうちに財産を渡せるため、贈与者の意思を反映しやすい点がメリットといえるでしょう。

 

ー相続とはなんですか?

贈与者が亡くなった際に、受贈者が遺産を引き継ぐという考え方を指します。相続では、基本的に赤の他人が遺産を引き継ぐことはできません。誰が遺産を引き継ぐかは法律で定められており、配偶者や子、子がいない場合は贈与者の親、親もいない場合にはその兄弟が対象となります。

 

大きな違いはタイミング

ー生前贈与と相続における大きな違いはなんですか?

やはり財産を受け取るタイミングとなるでしょう。相続は贈与者が亡くなったタイミングで受け取る一方、生前贈与は贈与者が生きているうちに財産を受け取ります。

財産が移動することはどちらも変わりませんが、生前贈与には「贈与税」、相続には「相続税」とそれぞれ異なる税金が課せられます。

 

生前贈与と相続、税率が低いのは?

生前贈与と相続ではそれぞれに異なる税金がかかるとわかりました。生前贈与と相続を比べると、税率が低いのはどちらなのでしょうか。

 

相続税の税率表

※出典:国税庁HPより

 

贈与税の税率表

 

一般税率(兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子への贈与で子が未成年者の場合など)

 

特例税率(祖父から孫への贈与、父から子への贈与など)

※出典:国税庁HPより

 

相続のほうが税率は低い

ー相続と生前贈与、税率が低いのはどちらなのですか?

税率から見ると、相続税率の方が低く設定されています。上記の表を見ると、たとえば5,000万円の財産に対して相続税は最大20%の税率がかかる一方、贈与税の場合はなんと55%も税率がかかってしまうのです。

 

ーでは、生前贈与より相続のほうが税金の負担は軽くなるのでしょうか。

一概にはいえませんが、相続の方が税負担は軽くなるケースが多いといわれています。相続の場合は税率が低いだけでなく、税金控除額が大きい点も特徴です。相続の場合、一定金額までは控除となるため、一般の方は相続税の影響を受けることはあまりないでしょう。

一方で、不動産を多く所有していたり都市部に資産価値の高い土地や建物を持っている場合では相続税の対象となりやすいため、生前贈与と相続をうまく組み合わせることで節税する方も多くみられます。

 

生前贈与がおすすめのケース

ー生前贈与がおすすめのケースはありますか?

特定の人に財産を渡したい方や、節税の一環として利用される方におすすめです。

 

ー節税の一環というのは?

生前贈与によって相続する財産を減らし、相続税の負担を軽減することです。先ほど例示したような財産の多い方ほど、その節税効果を得られる可能性が高まります。

たとえば7億円の財産を相続する際は、55%の税率がかかります。生前贈与を全くしなかった場合の課税金額は「7億円×55%(税率)-7,200万円(控除額)」=3億1,300万円です。

生前贈与で、55%よりも低い税率となる財産額を少しずつ生前贈与し、7億円から3億円、1億円…と減らしていくことで、結果的にトータルの税額を下げられることも期待できます。

 

ー相続と生前贈与を併用するのですね!

そうですね。相続税を減らすため、計画的に生前贈与を利用する方が多い印象です。

 

土地を生前贈与する際の手続きとは

土地などの財産を生前贈与する際は、どのような手続きが必要なのでしょうか。生前贈与の流れをお聞きしました。

 

①名義を変更する

ー土地を生前贈与する際、どのような手続きが必要なのですか?

名義の変更が必要です。「父から子に贈与する」といった取り決め自体は口約束でも成立しますが、法務局での名義変更が必要です。

 

ー名義変更は自分で行うのでしょうか?

一般的には司法書士の方に依頼します。「所有権を移転させる登記」という内容で依頼をし、名義を変更します。もちろん書類作成の手間は生じますが、自分でも申請できます。

 

②確定申告をする

ー名義変更をした後は、どのようなプロセスが必要になりますか?

税理士さんに依頼して確定申告を行います。

 

ーどちらもプロにお願いするのですね!

そうですね。贈与の際は、手続きごとに「誰に」依頼すればよいかを確認しておきましょう。

 

土地の生前贈与に使える!相続時精算課税制度の仕組み

土地の生前贈与には、「相続時精算課税制度」を使って税金対策をすることも可能です。相続時精算課税制度とはどのような制度なのでしょうか。

 

相続時精算課税制度とは

ー相続時精算課税制度とはなんですか?

相続時精算課税制度とは、贈与時の贈与税を軽減するために2,500万円まで贈与税を非課税にする代わりに、相続税として加算するというものです。

 

税率は相続税になる

ー贈与税ではなく相続税がかかるのでしょうか?

そうですね。受贈者は贈与されたタイミングで贈与税を支払う必要がなく、贈与者が亡くなったタイミングで相続税として加算されます。

2,000万円贈与された場合、一般的には贈与税よりも相続税の方が税金の負担は少なくなります。相続時精算課税制度は、税金対策として有効な手段といえるでしょう。

 

贈与・相続についての考え方

結婚・出産・家づくりなど、ライフイベントごとに贈与や相続について話が出ることもあるでしょう。贈与や相続は大きな金額が家族・親族間で行き来するため、トラブルに発展しないよう注意することが大切です。

贈与や相続についての考え方についてお聞きしました。

 

税金対策に気を取られすぎない

ー生前贈与で気を付けるべきポイントは何ですか?

贈与や相続について、あらかじめ家族で話し合っておくことです。贈与者の気持ちを反映できる点は生前贈与の大きなメリットである一方、家族・親族という人間関係がある以上「誰から誰に贈与があった」という話は必ず漏れてしまいます。

贈与者の独断で、家族・親族に説明なく特定の人に贈与をしてしまうと、不公平感ややっかみ等が生じて、後々家族間で揉めてしまう要因になりかねません。自分の財産だから何をやっても良いわけではなく、きちんと家族で話しあうようにしましょう。

 

ー生前贈与で揉める方は多いのでしょうか?

はい。相続税の税金対策として生前贈与を行った結果、納める税金は減ったけれど家族関係は悪くなってしまったというケースも少なくありません。あまり節税ばかりにとらわれず、家族関係を大切にしていただきたいです。

 

ーでも、生きているうちに相続の話ってなかなか難しいですよね…

そうですね…両親や祖父母が生きている間に家族でお金の話をするのはなかなか難易度が高いですよね。実際には、財産に関する家族会議をできていない方がほとんどでしょう。財産について話し合われないままに贈与者が終活を始め、贈与税と相続税の税率が違うことに気づいて生前贈与を勝手に行ってしまうというケースが多い印象です。

とくに受贈者・相続人側が財産の話を切り出すと、「早く死んでほしいのか」と、あらぬ誤解を招くこともあります。しかし、この議論は遅かれ早かれ、避けては通れない道。「財産を把握するため」ではなく「後で揉めないため」という趣旨を家族全員できちんと共有した上で、話し合いをすることが大切だと思います。

 

「相続の煩雑性」で引き起こされる遊休地問題

ー使われなくなった土地「遊休地」の問題に取り組まれるなかで、遊休地問題が引き起こされる原因の一つとしてどういった問題が挙げられると考えられますか?

相続の煩雑性が挙げられます。良くも悪くも不動産は金額が大きく、分けようと思えば分けられるため、手続き上共有財産にできてしまいます。

 

ー不動産を分けられるとはどういうことですか?

3人兄弟のものとして引き継いだ土地があるとしましょう。兄弟のうち1人が亡くなると、もともと引き継いだ兄弟+亡くなった兄弟の子どもが土地の所有者になります。

こうしてネズミ算的に共有者が増えると、管理・売却の方針を決める人数も増加するため合意形成がどんどん難しくなり、結果的に手つかずの土地が増えてしまうのです。

 

財産をもらう・渡すという双方の立場で知識を付ける

ー怖いですね…でも、相続や贈与はあまり馴染みがないため、とっつきにくい点もあります。一般の方が相続や贈与の知識を付けるためにしておいた方が良いことはありますか?

相続をする側とされる側の双方でどのようなプロセスが必要なのか確認しておきましょう。現在はインターネットでも気軽に情報を得られるようになりましたが、相続や贈与について確認すべきポイントは多岐にわたるため、あまり深く調べすぎると途中で疲れて挫折してしまうこともあります。相続や贈与について迷ってしまったら、専門家への相談も積極的に検討するとよいでしょう。

相続・贈与が発生した際にどういった方に依頼しないといけないのか、相続や贈与はどのような流れになるのかという全体像をつかむだけでもよいのです。

相続や贈与は、家族の幸せを願って行われる行為であり、決して家族関係を壊すものではありません。正しい知識を持って相続や贈与に向き合っていくことが大切なのです。

 

まとめ

今回は、土地の生前贈与や相続との違いについて取材しました。プロならではの贈与・相続についての考え方に触れることができましたね。

正しい知識を持って、贈与や相続について家族で考えていきましょう!

 

会社名 株式会社KLC
代表取締役 小林弘典
所在地 東京都港区赤坂四丁目13番5号赤坂オフィスハイツ18号室
設立 2018年9月13日
事業内容 相続を軸とした、山林・農地・別荘地・空き家の取引支援事業

・不動産引取サービス(遊休不動産の直接買取/有償引取)

・フィールドマッチングの運営(遊休不動産の個人間売買サイト)

 https://fieldmatching.com/

公式サイト https://klc1809.com/
YouTube 相続の鉄人

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