不動産コンサルタントが語る!今後の住宅市場とは

2023年3月6日

2022年から続く国際的な金利変動や環境保全の動きなど、目まぐるしく変わる住宅市場。2023年の不動産市場はどのように変化していくのでしょうか。

今回は、不動産コンサルタントの長嶋修さんに今後の住宅市場について語っていただきました。

 

お話を伺った方 長嶋修さん

1967年、東京生まれ。1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社・さくら事務所を設立、現会長を務める。

 

気になるトピック①金利変動の影響

昨年からジワリと上昇している固定金利。住宅市場に影響があるのか気になる方も多いのではないでしょうか。

今後の金利変動における影響についてお聞きしました。

 

固定金利は2%弱で推移

ー昨年から固定金利がジワリと上昇しています。金利変動の影響で住宅市場はどのように変化していきますか?

昨年から日本銀行(日銀)の政策変更で固定金利の変動幅が引き上げられ、2%弱まで金利は上昇しています。一方で住宅ローンを借りる方全体でみると、現在固定金利で住宅ローンを組む方は約3割。残りの7割は変動金利で住宅ローンを組んでいるといわれています。変動金利で借りる方のほうが多いため、住宅市場にあまり大きな影響は出ないでしょう。

 

市場に大きな変化はなし

ー変動金利も上昇するのでしょうか?

変動金利は大幅に上がることなく、大きな影響もないと考えます。むしろどれだけ金利を下げられるかで金融機関同士が争っているため、大幅な金利上昇は起こらないでしょう。

 

気になるトピック②不動産価格の動向

声高に叫ばれている不動産価格高騰についても、知見を伺いました。今回は、不動産価格のなかでも「中古マンション」に焦点をあてて解説します。

 

不動産価格は「バブル状態」?

ー不動産価格がバブル期並みに上がっているというお話もあります。なぜ高騰しているのでしょうか?

2012年に起きた自民党への政権交代を発端に、株価や不動産価格が上昇していきました。一方で、著しく伸び率が高い住宅はマンションのみとなっているのも上図で分かるかと思います。このように価格の推移を見ると大幅に上昇していますが、バブル期並みに負担する金額が増えているわけではありません。

 

ーどういうことですか?

住宅価格が上がっている一方で、金利負担は軽減されているためです。現在の金利は固定金利で約1.5%、変動金利では0.3~0.5%と、低い金利水準となっています。金利がバブル期にどうだったかというと、なんと金利7%だったのです。

 

ーバブル期はかなり金利が高かったのですね!

そうですね。バブル期に1億円借りていれば、毎月の支払額は65万円になります。いま同じ1億円という金額を借りると、毎月の支払額は25万円。バブル期と比べると、かなり金利の負担が減っているとわかりますね。

このように不動産価格だけを見るのではなく、同時に金利水準や購入者の支払額にも目を向けることが大切です。

 

中古マンションは成約率が減少

ー不動産価格指数の推移を見ると、マンションを中心にかなり価格が上がっていると分かりますね…。マンションといっても中古マンションのほうでは、成約価格や売り出し価格はどう変化しているのでしょうか?

首都圏で考えると、前年に比べて中古マンションの成約件数は都心部(区部)をのぞいてすべての地域で減少しています。上記のように成約件数が減少している一方で、成約㎡単価はすべての地域において上昇しています。

 

ー通常であれば取引件数が減れば価格は下がっていくものですよね?

そうですね。このような現象が起きている要因として、駅から遠かったり立地が不便な物件に移り住む人が減り、都市部や駅近物件を希望する人がより増えているのだと考えられます。

上記のように考える要因として、成約件数では都心部のみ上昇していることが挙げられます。一方で成約件数は都心部以外の地域で下がり、成約㎡単価は上がっていますよね。千葉や神奈川、多摩地域では立地的に不便な物件は選ばれにくいため「成約件数」という頭数で見ると減っていますが、都心部が人気で不動産価格が上がりすぎたため地方に流れ、成約㎡単価は上がる。こういった現象が起きているのでしょう。

 

コロナ禍で地方移住のニーズは増えた?

ーコロナ禍で地方移住のニーズが増えたという話もありますが…。

出典:東日本不動産流通機構

 

首都圏の中古マンション㎡価格の推移を見ると、緊急事態宣言が発令された2021年3月ごろからぐっと価格が上がっていると確認できます。「コロナ禍でテレワークが普及したため都心から地方への流動化が進んだ」という見方もある一方、私は単純に住まいの見直し期間に入り、需要と供給のバランスが変わっただけと考えています。

 

ー需要と供給のバランスとは?

コロナ禍をきっかけに、多くの人たちが住まいの見直しを始めました。家賃とローンを比較した時どうか、間取りや部屋の広さは…といったように賃貸と購入の2つを天秤にかけていくことで、一次取得層の住宅購入意欲が旺盛になりました。

 

ー金利も低く、購入しやすいですよね

はい。購入意欲が高まると同時に、一度住宅を取得した層からすると、売却意欲が下がってしまいました。住宅価格が上がっているため買い替えたとしても、「自分の住んでいる住宅よりもグレードは低いが価格は高い」という現象が起きてしまいます。

よって、全体的に売却意欲は低下しているけれど住宅取得意欲は増加しているため、需要と供給のバランスが崩れて住宅価格が上がっているのです。

 

気になるトピック③郊外の空き家対策の効果

2023年から空き家対策特別措置法の改正に関する動きが出ています。少子高齢化とともに進む空き家の増加に対して、政府はどう対応していくのでしょうか。

郊外の空き家対策と効果についてお聞きしました。

 

空き家対策特別措置法改正案が成立?

ーそもそも空き家対策特別措置法とはどのような法律なのでしょうか?

空き家対策特別措置法とは、空き家の再利用や処分を積極的に行うための法律を指します。2015年に施行された法律で、あまり実効性がなかったため法改正の動きが出ています。

 

実態と異なる法律

ー今回の法改正ではどういった内容が組み込まれるのでしょうか?

①活用促進区域を市町村が決定すること、②建て替え規制の緩和、③管理不全物件の固定資産税優遇解除の3点が追加されます。

もちろん法改正をするに越したことはないと思いますが、根本的な問題に対して解決できていないため実効性は低いでしょう。

 

ー根本的な問題とは?

根本的な問題は2つあります。1つは空き家活用制度を設けたところで、空き家を積極的に活用する人がいないと話にならないということです。空き家をリノベーションして賃貸として打ち出したり何らかのお店を出したり…といったように、空き家活用に関する何らかのモチベーションがないと、空き家活用の動きは生まれないでしょう。

2点目に、どれだけ空き家活用に力を入れたところで新築の優遇を辞めなければ空き家の増加は止まりません。自治体ごとに都市計画の仕方を見直すなどといった、抜本的な解決策が求められます。

 

効果のある空き家対策とは

ー効果のある空き家対策はどういったものだと考えますか?

どの地域にどんな建物が建てられるかという「用途地域」は自治体で管理している一方、住宅の戸数に関しては自治体が体系的に管理できているわけではありません。住宅の戸数や都市計画に関しては自治体に責任と権限を任せるという対策をしないと、根本的な解決にならないでしょう。

 

まとめ

今回は、2023年の住宅市場について長嶋さんにお話しいただきました。金利の微増に関する影響や住宅価格の動向などを、プロの目線から学べましたね。

住宅購入の際は、世の中の流れを把握することが大切です。トレンドに目を向けながら、かしこく家づくりを進めていきましょう!