床の間とは?本来の意味や役割から有効活用のアイデアまでご紹介

床の間とは、和室の一角に設けられたスペースのこと。床の間といえば昔ながらの日本家屋や掛け軸といったイメージが強く、和室で生活することが少なくなった現代では床の間の使い方に悩む人も多いのではないでしょうか。

この記事では、床の間の本来の意味や役割から、現代的な有効活用のアイデアまでをご紹介します。これから建てる家の和室に床の間をつくるか迷っている人、中古住宅やマンションで床の間の使い方に悩んでいる人は、ぜひチェックしてみてください。

 

床の間とは?

床の間とは何か、まず本来の意味や種類について押さえておきましょう。

 

床の間の意味

床の間とは和室の一角に設けられたスペースで、床が畳より一段高くなっているものが一般的です。

床の間は、書院造(しょいんづくり)という建築様式が誕生した室町時代からつくられはじめました。書院造とは、障子や襖、畳や床の間などで構成された武家屋敷の様式で、現代の和室の原型です。

床の間の起源については、殿様など身分の高い人が座るために一段高くしたという説のほか、仏具を置くための台であったという説もあります。そのため、神聖で特別な空間として認識されるようになったと考えられるでしょう。

 

床の間の種類

床の間には本格的なものから簡易なタイプまで、さまざまな種類があります。

最も一般的な床の間は、書院造でよく見られる「本床」と呼ばれるタイプです。本床は主に床板、床柱、床框(とこがまち)で構成されます。床柱とは床の間などに使われる化粧柱のことです。一段高くした床板を隠すように、化粧横木である床框を設置します。

本床をより簡素にした「蹴込床(けこみどこ)」は、床框を設置せず、床板に蹴込板(けこみいた)を設置して畳より一段高くした様式です。

畳と同じ高さに床板を張った「踏込床(ふみこみどこ)」は、段差がない分、カジュアルな印象になります。

ほかにも袖壁を設けたデザイン性の高い「袋床」や、床板が台座となっており移動させられる簡素な「置き床」など、種類が豊富な点も床の間の特徴です。

 

床の間の役割

床の間には主に「飾るスペース」と「おもてなしのためのスペース」の2つの役割があります。それぞれについて見てみましょう。

 

飾るスペース

床の間は、神聖なものや大事なものを飾るスペースとして認識されてきました。伝統的には以下のようなものを飾って季節感や風情を楽しみますが、現代では家人の好みのものを飾って楽しむ人も増えています。

季節の花や掛け軸を飾る

床の間に飾るものといえば、生け花や掛け軸をイメージする人が多いでしょう。

床の間が誕生した室町から安土桃山時代にかけては、華道や茶道などの日本文化が花開きました。茶室建築の様式である数寄屋造(すきやづくり)は、書院造で重視されていた格式を排除し、簡素ながら洗練された意匠が特徴です。床の間には茶会の客人をもてなすために四季折々の花を活けたり、季節感や風情のある掛け軸や書画を飾ったりする文化や習慣が定着しました。

ひな人形や五月人形を飾る

床の間は花や掛け軸のほか、季節を感じられる工芸品などを飾る場所でもあります。正月の干支飾りのほか、ひな人形や五月人形もその代表例です。

季節感があり、子どもの健やかな成長を願うひな人形や五月人形は、神聖な床の間にぴったりの飾り物といえるでしょう。

 

おもてなしのためのスペース

床の間は江戸時代には庶民の家にも広まり、来客をもてなすための部屋につくられました。和室の中では床の間に近い席が「上座」とされ、目上の人や来客が上座に座るのがマナーとされます。来客に喜んでもらえるよう、座敷飾りをするのも床の間の役割として定着しました。

おもてなしスペースとしての役割やマナーは、現代の床の間にも受け継がれています。

 

床の間で気をつけたいタブー

床の間を本来の意味や役割で使う場合、避けたほうがよいタブーについて押さえておきましょう。

 

上に乗る

床の間は神聖な空間と考えられているため、足で踏んだり乗ったりするのはタブーです。

「床」には寝室という意味もあります。床の間のある部屋に座ってくつろいだり寝たりするのは問題ありませんが、床の間に上がるのは避けましょう。

 

物置として使う

床の間に雑多に荷物を置く行為は、おもてなしのためにきれいに飾るという本来の目的から逸れてしまいます。また、床の間は床板が薄く、重量のあるものを置くと割れたり傷ついたりする恐れがあるため、物置には不向きです。

床の間をきれいに飾る目的であっても、重たいものを置くのは避けましょう。

 

人が嫌がる可能性のあるものを置く

床の間はおもてなしのために飾りつけをする場所であるため、家人の好みであっても人が嫌がるようなものを置くのはNGです。人によって好き嫌いがわかれるものを置くのは避けたほうがよいでしょう。

 

おしゃれな床の間の使い方・飾り方のポイント

床の間は季節の花や掛け軸、節句飾りに最適な空間ですが、タブーを避ければさまざまな使い方・飾り方を楽しめます。

床の間をより楽しむために、おしゃれな使い方・飾り方のポイントを押さえておきましょう。

 

余白をつくる

床の間には前述の通り、飾るためのスペースという役割があります。ただし、広いからといってたくさん物を置くと、メリハリ感がなく、ごちゃごちゃした印象になりがちです。

床の間にものを飾るときは「余白の美」を意識すると、装飾品はもちろん、空間そのものを美しく見せることができます。飾るアイテムは数を絞り込み、余白部分を多くとりましょう。

 

間接照明を使う

床の間の飾りつけでは、間接照明を効果的に取り入れるのがおすすめです。

床の間は和室の隅に設けられるため暗くなりがちですが、照明の効果によって余白の美しさが引き立ち、格式高く神聖な雰囲気が高まります。また、掛け軸や飾り物に間接照明を当てたり陰影をつくったりすると、一層おしゃれに見えるでしょう。

 

背景をおしゃれにする

床の間の背景をおしゃれにすると、厳選されたアイテムが一層映えるでしょう。

床の間の壁面を漆喰(しっくい)や珪藻土(けいそうど)の塗り壁にすると、伝統的な掛け軸や飾り物はもちろん、現代的な雰囲気の飾り物にも似合います。飾りたいものの雰囲気に合わせて、おしゃれなアクセントクロスを貼るのもおすすめです。

 

床の間を有効活用するアイデア

現代の住宅事情においては、床の間を本来の意味や目的で使えないことや、デッドスペースになってしまっていることもあるでしょう。その場合は思い切ってリフォームや別の有効方法を考えてみるのがおすすめです。

ここでは床の間を有効活用する4つのアイデアをご紹介します。

床の間のアレンジを実例でご覧になりたい方はこちらの記事もチェックしてみてください。
>>おしゃれな床の間にする方法|インテリア事例5選もご紹介!

 

ディスプレイスペースとして

楽器やレコード、フィギュア、旅で集めた思い出の品など、趣味のアイテムがたくさんある場合は、床の間をディスプレイスペースにして飾るのがおすすめです。

壁面に飾り棚を設置すると、高さのある床の間の空間を活かしたディスプレイができます。しまい込んでいた食器や靴などのコレクションも床の間に飾ると、いつでも眺めて楽しめるでしょう。

 

収納スペースとして

家の収納場所が少ないことで悩んでいる場合は、床の間を収納スペースとして活用するのもおすすめです。収納ボックスを置いて突っ張り棒を渡せば、クローゼットとしても使えます。カーテンやロールスクリーン、扉をつけると、生活感のあるアイテムも目隠しできるでしょう。

ただし、前述したように床の間の床はそれほど強度がないため、重量のあるものを置くと傷ついたり割れたりする恐れがあります。タンスなどを置きたい場合は、事前に工務店やハウスメーカーに相談してみるとよいでしょう。

 

書斎や作業スペースとして

床の間に机などが置ける奥行きと幅があれば、書斎や作業スペースをつくれます。半個室のような床の間の特長を活かして、勉強や仕事、作業に集中しやすいスペースをつくれるでしょう。

ライトを設置するほか、好みの色や集中力が高まる色の壁紙を貼るのもおすすめです。壁面を有効活用して棚をつくれば、書籍や道具類もすっきり整理できます。

 

運動スペースとして

運動やフィットネスの器具を置く場所に悩んでいる場合は、床の間を運動スペースにリフォームするのもおすすめです。

リビングや個室の空間を圧迫しがちなフィットネスバイクやぶら下がり健康器なども、床の間に置けば悩みが解消します。また、定位置ができることで、毎日の運動もはかどるでしょう。

 

まとめ:床の間とは?意味や役割を押さえ、現代的に有効活用しよう

床の間とは、季節や風情を感じるものを飾ったり、おもてなしの心を表現したりするために欠かせない、和室に設けられた伝統的な空間です。この記事では本来の意味や役割と使い方や飾り方のポイントから、現代の住宅事情に合わせて有効活用する方法まで、幅広くご紹介しました。

床の間の活用方法で悩んでいる人や、これから和室に床の間をつくるか迷っている人は、ぜひ参考にしてみてください。