不動産のプロが語る!“後悔しない”土地選びのポイントとは?
家づくりを検討される方の中で、土地選びから必要な方も多いのではないでしょうか。これから長い間住む場所だからこそ、しっかりと土地選びのポイントを理解して、検討することが大切です。今回は、宅地造成や不動産売買などの不動産事業、総合建設事業などを手掛ける葛城建設工業㈱常務の高野さんに土地選びのポイントについてインタビュー。プロならではの目線から知見を語っていただきました。
お話をうかがった方
高野晃一(たかの こういち)さん
1984(昭和59)年生まれ、熊本市出身。大手建材メーカーで、建材店やハウスメーカー・工務店への売り上げ拡大支援や営業コンサルを10数年経験。2014年に葛城建設工業㈱(熊本市)入社、22年常務取締役に就任。入社以来、不動産事業の新規立ち上げなどを手掛け、LIXIL不動産ショップに加盟。21年不動産事業のコンサルティング業務を開始。相続相談や相続セミナーなどを手掛ける「LIXIL不動産ショップ相続サロン」としての事業も展開している。
家の資産価値を高めるためにも土地選びは重要
―土地選びで一番大切なことは?
高野 家づくりを検討し始めると、「将来、完成した家(資産)を子どもたちに残してあげたい」と考える方は多いのではないでしょうか。家づくりにおいての価値観は人それぞれのため正解はありませんが、「将来、資産を子どもたちに残したい」と思われる方にとってはより資産価値を高めるためには土地選びが非常に重要になってきます。ただ、住宅メーカーに土地探しを依頼した場合、住宅本体の予算を優先的に確保する傾向があるため、予算の都合から希望していた地域から離れたエリアに家を建てることになったというケースも少なくありません。
「資産価値の高い家づくり」を行うためには、まずは将来的に資産として残る土地を決定し、その予算を確保した上で、理想の住まいづくりを実現することが大切だと考えます。
-家本体は、将来的に価値は残らないのですか?土地選びを優先した方がいい理由は?
高野 日本の場合、不動産業界において、一戸建て住宅の価値は築20年でゼロになるとされています。一方で、土地の価格は相場による変動はあるものの、築年数とは無関係のため、建物の価値がゼロになっても土地代は担保されます。このような理由から「資産価値のある家づくり」を行うためは土地選びが非常に大切だと考えています。小学校や駅、バス停、病院、ショッピングモールが近いなど、希望条件に合った土地を妥協することなく決めていただきたい。希望の土地が見つかった際は、将来的にその土地の価値が担保される土地かどうか、という点もぜひ調べていただきたいポイントです。
―どのようにしたら、将来的な不動産の価値が分かりますか?
高野 現在日本は、人口減少や高齢社会に適応するため、都市の規模を縮小し、そこに商業施設や公共施設などの都市機能を集約する持続可能な「コンパクトシティ」化に向けて取り組んでいます。このコンパクトシティ化を具現化していくための計画「立地適正化計画」を各市町が必要に応じて策定しており、医療・福祉・商業施設など都市機能増進施設を誘導すべき区域を「都市機能誘導区域」、居住を誘導すべき区域を「居住誘導区域」として定めています。当社で土地の査定を行う際は、将来的な土地の価値として、これらの区域に含まれているかどうかも査定基準の一つに入れています。インターネット上でどなたでも閲覧可能なため、土地の購入を検討される方は、その土地がこれらの区域内であるかどうかを調べていただくと将来的な土地の価値を見極める参考になると思います。もちろん、これらの区域に入っていないからといって、その土地が悪い土地だというわけではありません。「資産価値の高い家づくり」を行う手段の一つとしてこれらの情報を参考にしていただき、その区域内、あるいはそのエリアの近くであるなどを調べることが、「後悔しない土地選びのポイント」の一つになると考えています。
―土地選びを住宅メーカーと不動産会社に依頼する場合のそれぞれのメリットは?
高野 住宅メーカーはやはり住宅のプロであるため、少し癖のある土地に対してもそこから見える風景を生かした家づくりや、その土地に合った家づくりのプランを土地選びの段階から提案してくれます。
一方で、土地のプロである不動産会社に依頼した場合は、これまでに多く土地も見てきた経験などから、形や地域など本当におすすめの場所を提案してくれます。家を建てたいエリアにある地元の不動産会社などに相談された場合は、その地域の特性、例えば住民の中で多い職業など地元ならではの情報を教えてもらえるなどのメリットはあります。住宅メーカーで土地探しを依頼されている場合でも、その地域の不動産会社に一度相談されると、より安心だと思います。
―土地探しの事前準備は?
高野 まずは予算決めをすることが大切です。月々の支払いシミュレーションなども行い、支払い金額をどのくらいで押さえたいのかを明確にする必要があります。また土地の形についても知識を付けておくといいですね。一般的に好まれる形は南北に長い長方形の土地。南側に道路、北側に土地という配置は、日当たりが良く、視界も気にならないなどのメリットがあります。分譲地の場合も、このような土地が一番高い価格に設定されている場合が多いです。
土地を選ぶ際に絶対に確認してほしいポイントとは?
―現地で確認すべきポイントは?
以下の5項目について確認されることをおすすめします。
周辺の雰囲気
お客さまそれぞれで感じ方は違いますが、場所の雰囲気を見ることも大切です。どんなに立地条件が良くても日当たりが悪い、「なんとなく、雰囲気が暗い」と感じる場合もあると思います。当社で分譲地を開発する際も、ハウスメーカーさんによっては、「土地をできるだけ明るく仕上げてほしい」という要望をいただくこともあります。それだけ場所の雰囲気は非常に大切になります。ぜひ、現場に足を運び実際の雰囲気も見ていただきたいと思います。
道路からの高低差
高低差のある土地とは、前面道路や周辺の宅地よりも高いもしくは低い位置にある土地のことを指します。道路より高い位置に家があるということは、眺望が良いなどメリットもありますが、工事の際に重機を上まで上げなきゃいけないなど、工事費用は平坦な土地と比べて上がる傾向にあります。高低差がある土地は、平坦な土地に比べて価格は安くなりますが、工事費用が高くなってしまう場合があることを把握しておく必要があります。
周辺の環境
土地を購入して家を建てると、近隣住民の方との付き合いは避けては通れないものです。周辺環境(騒音、においなど)や近くに変な人が住んでいないかなど、近隣住民の方に実際にお話しを聞くと、下見だけでは分からない情報なども得ることができます。
上下水道が整っているかどうか
上下水道が整っているかいないかで、建物を建築する費用が大きく変わってくるため、事前に把握しておくことが大切です。
「ハザードマップ」で自然災害のリスクを事前に把握
ハザードマップは、各市町村のインターネット上で公開されており、洪水、土砂、津波、地震など、購入を検討しているエリアの自然災害リスクを調べることができます。その土地の災害リスクや避難経路などを調べた上で、その土地を購入するかどうかを決定することが大切です。
分譲地以外の土地を買う場合はここに注意!!
―分譲地ではなく、空き地を購入する場合に確認すべきポイントは?
分譲地ではなく空き地の場合は、境界が確定されているかどうか、確定されていない場合は「境界立ち合い」が可能かどうかも調べておきましょう。空き地の場合、以前は何が建っていたかということも確認すべき点です。家を建てる際には、基礎工事で土地を掘り返します。その際、産業廃棄物が出てくるとその処分費も必要になり思わぬ経費がかかる場合があります。現在、産廃の処分費もどんどん上がっているため、以前何が建っていたかというのを把握することも大切です。
まとめ
今回は、「資産価値を高める家づくり」を実現するために土地選びで大切なことなどをお聞きしました。大切なことは、土地選びを妥協せず、将来的な価値も含めて検討すること。理想とする暮らしをイメージし、後悔のない家づくりを実現しましょう。