いま注目されているリバースモーゲージって?専門家が徹底解説!
今回ご紹介するのは家を担保にして融資を受ける「リバースモーゲージ」というローン。家を担保にするという発想はなんだかもの珍しいですよね。
衣食住は生活に欠かせないものであり、持っているだけで自分の財産になります。衣服は高価なものであれば高い値段で売れますし、食べものであれば畜産業や農業といった形で仕事にしている方もいるでしょう。しかし家だけは、住む場所がなくなってしまうため簡単に売ることはできませんよね。
今回ご紹介するリバースモーゲージは、自宅に住み続けながら融資を受け、債務者が亡くなった際に返還する制度となっています。リバースモーゲージとは具体的にどのような制度なのでしょうか。
今回は、リバースモーゲージなどの相続問題に特化した相談窓口である(一社)かぶきライフサポート 代表の植崎さんにインタビュー!リバースモーゲージの特徴や使い方などをお聞きしました。
お話を伺った方
一般社団法人かぶきライフサポート代表 植崎 紳矢(うえさき しんや)さん
【資格】公認会計士、税理士、不動産鑑定士、宅地建物取引士、CFP、1級ファイナンシャルプランナー
リバースモーゲージとは、自宅を担保にお金を借りるローンのこと
今回ご紹介するのはリバースモーゲージというシニア向けのローン。リバースモーゲージは自宅を担保にして融資を受けるというもので、通常の住宅ローンなどとは違う金融商品となっています。
リバースモーゲージの概要について、ざっと見ていきましょう。
リバースモーゲージとは
ーリバースモーゲージとはどのようなローンですか?
リバースモーゲージとは自宅を担保にして融資を受けるシニア向けのローンのことで、もらった資金はさまざまな用途で使えることが特徴です。住宅ローンは家の購入に限定された融資である一方、リバースモーゲージでは生活費などにも充てられます。
リバースモーゲージはいつから始まった?登場した背景
ーリバースモーゲージはいつから始まりましたか?
1980年から仕組みとしては存在していました。現在のリバースモーゲージの母体が登場したのは2000年代です。
ーリバースモーゲージが登場した背景を教えてください
リバースモーゲージ登場の背景として、平均余命が伸びたことや年金問題、物価の上昇などが挙げられます。今後も少子高齢化の影響で年金支給額は下がると考えられるため、毎月の生活費が足りない高齢者の方がどんどん増えていくと予想されます。
これら老後資金の問題に解決策として登場したのが、リバースモーゲージです。
ニーズが高まっているリバースモーゲージ
ーリバースモーゲージのニーズは高いのでしょうか?
そうですね、リバースモーゲージの相談に来られるお客さまは近年ぐっと増えました。私が以前銀行に勤めていた5、6年前ではリバースモーゲージの認知度は低く、契約する方も少ない印象でした。
社会情勢の変化に伴い、老後生活に余裕を持たせたい方などを中心にリバースモーゲージのニーズが高まってきたと考えられます。
リバースモーゲージと住宅ローンの違いは主に3つ
リバースモーゲージと住宅ローンの違いは、ものを買うためにお金を借りるわけではないという点。住宅ローンは家という新たな財産を「手に入れる」ために融資を受ける一方、リバースモーゲージは家という財産を「使って」生活費などをまかなうローンになります。
リバースモーゲージと住宅ローンとの違いを詳しく見ていきましょう。
①資金用途がさまざま
ーリバースモーゲージと住宅ローン、もらった資金の使い道で違いはあるのでしょうか?
住宅ローンであれば住宅取得が主な資金用途になる一方で、リバースモーゲージの場合は住宅取得だけでなくいろいろな用途に資金を使える点がポイントです。
ーリバースモーゲージでは、具体的にどのようなことに使えるのですか?
リバースモーゲージは、生活資金や子・孫への学費援助、旅行などの娯楽費、リフォームや借り換え資金などに使えます。
②元金の支払いがない
ーリバースモーゲージと住宅ローンでは、月々の返済額にどのような違いがありますか?
リバースモーゲージのほうが月々の返済額は減ります。住宅ローンであれば金利と元金の両方を返済するのに対して、リバースモーゲージの場合は元金を払う必要はありません。リバースモーゲージは毎月金利のみを返せばよいので、月々の負担は少ないでしょう。
③融資を受けられる条件や金額
ーリバースモーゲージと住宅ローンで、融資を受けられる条件に違いはありますか?
住宅ローンは債務者の収入を重視するのに対し、リバースモーゲージでは年金生活者の方も融資を受けられます。リバースモーゲージは自宅を担保に融資するため、立地や建物の状態などを審査します。
ー融資される金額にはどのような違いがありますか?
リバースモーゲージでは自宅の価値が下がった際のリスク回避のため、融資される金額は住宅ローンほど多くありません。たとえば2000万円の価値がある家の場合、融資される金額は1000万円ほどであったりします。
リバースモーゲージでは、経年劣化で価値が下がったとしても元金を返せるように金額が設定されているのです。
ーでは、リバースモーゲージは銀行側のリスクも高いローンなのでしょうか?
そうですね。銀行側からすると、住宅の市場価値を予想して融資をしなければいけないため、リスクはあります。今は市場価値のある住宅であっても、10年後に同じ価値があるわけではありません。
融資金額を下げるなどのリスクヘッジを行いながらリバースモーゲージを販売していると思います。
借りた資金の使い道は?投資には使えないため要注意!
生活資金や子・孫への援助、リフォーム、借り換え、住み替えなど幅広く資金の使い道があるリバースモーゲージ。どのような使い方をするとお得になるのでしょうか。
リバースモーゲージでいちばん多い使い道は生活資金
ーリバースモーゲージは、実際にどのような使い方をされる方が多い印象ですか?
生活資金という使い道が多い印象です。年金だけでは最低限の生活しかできません。外食の回数を増やしたり旅行に行ったりするなど、少し贅沢をしながら余生を楽しみたい方が多いのではないでしょうか。
ーリフォームや借り換えなど住宅資金に対して使われる方が多いと思っていたので、意外でした!
もちろん住宅資金に使われる方もいらっしゃいますし、リバースモーゲージはリフォーム資金などの住宅に関連する使途のみに限定しているという銀行もあります。資金用途については金融機関それぞれに特徴があるため、自分の使い道はどの銀行に当てはまるのか調べてみましょう。
投資目的では使えない
ーリバースモーゲージで禁止されている使い方はありますか?
投資や事業性のある資金には使えない決まりになっています。株式や投資信託、不動産投資に資金を使うことは原則できません。
ー事業性のある資金とは?
自分の持つ店の改装工事や、新たに店を始める際の開業資金のことです。事業資金は国からお金を借りられるため、リバースモーゲージでは使えません。
住宅ローンの借り換えはお得になる?
ー住宅ローンの借り換えも可能なのでしょうか?
住宅ローンを借りていても自分の家を持っていることに変わりはないため、借り換えは可能です。月々の返済が厳しい方など、毎月の負担を抑えるためにリバースモーゲージに借り換える方もいらっしゃいます。
住宅ローンの場合、金利だけでなく元金の支払いもあるため、どうしても毎月の負担が大きくなります。リバースモーゲージで融資を受けながら住宅ローンを返済することで、毎月の返済額を金利のみにして負担を減らせるのです。
ー住宅ローンをリバースモーゲージで完済した場合、債務者が亡くなったら完済した住宅も売却するのですか?
自宅の売却資金で支払う以外にも返済の仕方はあります。相続人の方が売却資金を得なくても元金を返済できるのであれば、元金を返済して自宅の保有を続けることも可能です。
リバースモーゲージでマンションへの住み替えは多い?
ーリバースモーゲージの資金用途にも含まれている住み替え。実際に高齢者の方で住み替えを希望される方は多いのでしょうか?
そうですね。戸建てからマンションへ住み替えをされる方は多いと感じます。
ーなぜ戸建てからマンションへ住み替えされるのですか?
メンテナンスの負担が少なく、部屋もワンフロアで完結するなどの理由ではないでしょうか。
戸建て住宅ではどうしても自分で壊れた箇所や汚れを直す必要があるほか、2階建てなどは階段の上り下りが辛いという方も。年齢を重ねるにつれ、戸建て派からマンション派になる方が多くなるのではないでしょうか。
リバースモーゲージの仕組みは?返済方法などを詳しく解説
債務者が亡くなった際に元金を支払う仕組みのリバースモーゲージ。返済期間があるローンなど期間が決まっているわけではない終身のローンであるため、仕組みや返済方法に疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
リバースモーゲージの仕組みを、予想されるケースをもとに解説していただきました。
ケース①債務者が亡くなり、自宅に住み続ける方がいない場合
ー債務者が亡くなって自宅に住み続ける方がいない場合、リバースモーゲージの返済方法はどうなりますか?
リバースモーゲージの担保にしていた自宅を売却して元金を返済するか、債権者もしくは相続人が持つ現金で返済するかの2択になります。
ケース②債務者は亡くなったが、配偶者が自宅に住み続けたい場合
ーシニアの夫婦どちらか片方が亡くなった場合はどうなりますか?
債務者が亡くなったけれど配偶者が自宅に住み続けたい場合、配偶者がリバースモーゲージの契約を引き継ぐことが可能です。銀行によって対応は異なるため、確認しておきましょう。
家の価値が下がり、返済できない可能性は?
ー家の価値が下がり、元金を返済できないという可能性はありますか?
今後起こる可能性が0とは言い切れませんが、融資する金融機関はリスクを見越して融資金額を抑えているため、ある程度のリスク回避はできると考えてよいでしょう。
リバースモーゲージのリスク
毎月金利だけの返済でよいリバースモーゲージ。もちろん金利や独特な仕組みから生じるリスクもあります。しっかり確認していきましょう。
金利が変動する
ーリバースモーゲージのリスクを教えてください
金利変動のリスクが挙げられます。現在、海外では金利が上がっている一方で日本の金利は低いままです。日本も将来的に金利が上がるともいわれているため、金利負担額は増える可能性があります。
長く生きる分だけ金利を支払う必要がある
ーほかにリバースモーゲージのリスクはありますか?
長く生きるほど金利を払い続ける必要があります。豊かな老後を送るための融資ですので、長生きをリスクととらえるのは少し違うと感じる一方、リバースモーゲージの仕組み上そういった側面があります。
リバースモーゲージは元金が減らない分、金利をずっと支払う必要があるのです。
リバースモーゲージがおすすめなケース
仕組みや条件が従来のローンとは違うリバースモーゲージは、どのような方に向いているローンなのでしょうか。詳しくお聞きしました。
相続人がいない方
ーリバースモーゲージはどのような方に向いていますか?
リバースモーゲージは相続人がいなかったり、お子さんが自分で住宅を購入して家を引き継ぐ人がいない方です。相続人がいないと、家を残していても亡くなったあとは国庫に帰属するため、もったいないと感じる方も多いのではないでしょうか。
ー相続人がいない場合は自宅を売って返済するのですか?
そうですね。リバースモーゲージの債務者の方が亡くなると、担保にしていた住宅を売却して元金を返済します。返済が終わって残ったお金は、相続人不在となり国庫に帰属します。
老後の資金が不安な方
ーほかにリバースモーゲージがおすすめなケースはありますか?
自宅はあるけれど手元にお金があまりなく、生活資金に不安を持つ方にリバースモーゲージがおすすめです。比較的簡単に借りられて毎月の支払いも抑えられるため、老後の資金が心配な方も安心して借りられます。
貴重な財産である住宅に住み続けながらも融資を受けられるのはリバースモーゲージならでは。高齢者の方で生活に少しゆとりを持たせたい方にとっては貴重な金融商品となっているのではないでしょうか。
まとめ
今回はリバースモーゲージというローン制度について語っていただきました。生活資金だけでなくリフォームや借り換え、住み替えなど多くの選択肢が広がっているため、リスクヘッジをすればとても魅力的な制度でしたね。
一つのローンだけでなく多種多様なローン制度を知っておくことで、今後の生活をさらに豊かにできます。ぜひローン選びの参考にしてみてください!
会社名 | 一般社団法人 かぶきライフサポート |
代表 | 代表理事 植崎 紳矢 |
理事 |
吉岡雅之 小林義崇 |
電話番号 | 03-5358-9828 |
設立 | 2021/9/15 |
事業内容 | 生前対策から相続税申告、不動産の活用や登記手続きまで一貫してサポートするほか、海外向けの相続問題への取り組みも積極的に行っています。 |
公式サイト | https://kabuki-support.jp/ |
YouTube | https://www.youtube.com/channel/UCm4jJz72VeCrRI30inJl0yA |