長期優良住宅のメリットは?補助金制度や税制優遇についてプロが解説!
長期優良住宅にすると税制上の優遇や補助金の申請ができる一方、どのような補助金や税制優遇を受けられるのかわからない方も多いのではないでしょうか。
今回は長期優良住宅を建てるメリットや注意点について、家づくりとお金のアドバイザーとして活動される鈴木さんにインタビュー!長期優良住宅の特徴をはじめ、家づくりをするうえでの注意点などもお聞きしました。
お話しを伺った方
鈴木 章浩(すずき あきひろ)さん
長期優良住宅とは
長期優良住宅とはどのような住宅なのでしょうか。長期優良住宅に認定される基準や条件をお聞きしました。
長期優良住宅とは国からお墨付きを受けた住宅
ー長期優良住宅とはどのような住宅なのですか?
‘‘国が認めた「良い家を長持ちさせる」住宅”のことを長期優良住宅といいます。良い家を長持ちさせるために一定の基準を与え、クリアしたと国が認めた場合に長期優良住宅と呼ばれる家になります。
長期優良住宅の基準
ー長期優良住宅の基準にはどのようなものがありますか?
省エネ性や耐震性、劣化対策をはじめ、バリアフリー性、維持管理保全などの基準があります。省エネ性や耐震性が肝といわれており、省エネ性は断熱等級が4以上、耐震性は耐震等級が2以上と決められています。
長期優良住宅の条件
ー長期優良住宅に認定される条件は何ですか?
上記の基準を一定数満たしていることと、国へ申請する前に第3者機関に申請することです。
ー第3者機関への申請とは?
登録住宅性能評価機関という団体に申請依頼を提出することです。長期優良住宅の基準を満たしていると判断された場合、「技術的審査適合証」を受け取ります。
適合証がないと国への申請に移れないため、長期優良住宅に認定される前提条件として必要になります。
長期優良住宅のメリットとは
長期優良住宅に認定されることでどのようなメリットがあるのでしょうか。暮らしの面から考えられるメリットと、お金の面から考えられるメリットをそれぞれご紹介します。
暮らしの面から考えられる長期優良住宅のメリット
ー長期優良住宅にすることで、暮らしの面からどのようなメリットがあると考えますか?
私の考えですが、長期優良住宅=住みやすい家とは限りません。長期優良住宅はあくまで一定の基準を満たしただけであるため、住みやすいかといわれるとまた別の話なのです。
ー長期優良住宅とはあくまで基準の一つなのですね
そうですね。長期優良住宅に認定されている住宅すべてが「夏涼しく冬は暖かい家」ではありません。長期優良住宅は一つの最低基準と考え、住み心地についてはハウスメーカーと相談しながら高めていくことが大切です。
お金の面から考えられる長期優良住宅のメリット
ーお金の面から考えられる長期優良住宅のメリットはなんですか?
補助金制度という観点からいうと、長期優良住宅にすることで補助金の金額が上がったり、新たに補助金がもらえたりすることがメリットです。
いま使える補助金の場合、子ども未来住宅支援事業や地域グリーン化事業などでは、一般の住宅よりも長期優良住宅のほうがもらえる補助金額は高くなります。
税制優遇にも大きなメリットが
長期優良住宅にすると、補助金制度だけでなく税制優遇という観点からも大きなメリットがあります。
税制優遇に関するメリットは主に①住宅ローン減税、②登録免許税、③不動産取得税、④固定資産税の4つ。一つずつ確認していきましょう。
①住宅ローン減税
ーそもそも住宅ローン減税制度とはなんですか?
住宅ローン減税制度とは、住宅ローンを借りて家を購入する際、毎年の住宅ローン残高から0.7%を所得税から控除できる制度のことです。
ー住宅ローン減税に関する長期優良住宅のメリットはなんですか?
住宅ローン控除の対象になる「年末のローン残高の限度額」が一般の住宅よりも優遇されます。愚弟的には、一般の住宅では年末のローン残高が3000万円、長期優良住宅では5000万円が限度額になります。
ー2000万円も違ってくるのですね!年間の控除額は大体どれくらい変わるのでしょうか?
ローン残高が4000万円だった場合、一般の住宅では3000万円が上限であるため「3000万×0.7%」が控除額になります。一方長期優良住宅では5000万円が上限になるため「4000万×0.7%」が控除額になります。
限度額に2000万円の差が出ると、年間の控除額は約14万円ほど変わってくるため注意しましょう。
②登録免許税
ー登録免許税とはなんですか?
登録免許税とは、土地や住宅を購入して所有権を登記する際にかかる税金のことです。
ー登録免許税における長期優良住宅のメリットはなんですか?
一般の住宅は登録免許税の登記費用が評価額の0.15%である一方、長期優良住宅では評価額の0.1%となっている点です。
たとえば評価額2000万円の住宅では、一般の住宅を建てる際にかかる登録免許税は約3万円、長期優良住宅の場合は約2万円になります。
③不動産取得税
ー不動産取得税とはなんですか?
不動産取得税とは、住宅などの不動産を購入したときに支払う税金のことです。
ー不動産取得税における長期優良住宅のメリットはなんですか?
一般の住宅では課税金額から1200万円の控除になる一方、長期優良住宅では課税金額から1300万円の控除になります。控除額に100万円の差があるため、最大3万円ほど負担する金額が変わってきます。
④固定資産税
ー固定資産税とはどのような税金ですか?
固定資産税とは、家を所有することで発生する税金になります。
ー固定資産税における長期優良住宅のメリットはなんですか?
固定資産税に関しては、一般の住宅では3年間、固定資産税が半額になります。長期優良住宅の場合は固定資産税の半額期間が2年間延長され、固定資産税が5年間半額になります。
2年間半額期間が増えるだけでも、人によってはかなりお得になるため、しっかりチェックしましょう。
長期優良住宅の注意点
長期優良住宅を購入するには、補助金や減税制度というメリットだけでなく注意点についても把握することが大切です。
長期優良住宅を購入する際の注意点をお聞きしました。
建築費用は高くなる可能性がある
ー長期優良住宅を建てる際、どのようなことに注意すればよいのでしょうか
長期優良住宅の施工実績があまりない建築会社の場合、材料や施工方法を変える必要があるため建築費用は高くなる可能性があります。
長期優良住宅を検討する際は、長期優良住宅を標準装備していたり、施工実績のある建築会社に頼むのがよいでしょう。
ー長期優良住宅に対応できる建築会社は増えているのでしょうか?
はい。長期優良住宅が徐々に「当たり前のもの」として変化しています。長期優良住宅の基準を設けることで、お客さまだけでなく実務者の方にもメリットがあります。
ー実務者にもメリットがあるというのはなぜですか?
昔は長期優良住宅のような基準がなかったため、言った言わないの問題になることも多かったといわれています。現在は通知書が一枚あることで大きな信頼感を与えられるため、お客さまが安心できるだけでなく実務者の方も問題が起きにくくなるのです。
国が一定の基準を設けることで、お客さまと実務者の双方が良い関係を築きやすくなるというのは大きなメリットだと思います。
補助金を伝えたい意思は早めに伝える
ーそのほか長期優良住宅を建てる際に気を付けるべきことはありますか?
長期優良住宅に関する補助金を受け取る場合は、なるべく早く住宅会社に補助金を使いたいと伝えておきましょう。
どのような補助金制度があるのか、一般の方が調べるには限界があります。住宅会社側から、今使える補助金と使えない補助金、申請の流れなどを把握しておくことが大切です。
必ずしも住み心地に直結するわけではない
ーなるほど。実務者も理解して業務を行うことが大切なのですね
そうですね。また、長期優良住宅=住み心地が良い住宅とは限りません。あくまで長期優良住宅は国が定めたひとつの基準に過ぎないため、住みやすい家をつくるには住宅会社と打ち合わせを重ねながらよい住宅にしていきましょう。
長期優良住宅を申請するには?!用意するものや流れを解説
長期優良住宅を申請する際の流れや期間を知っておくことで、安心して家づくりを進められます。
長期優良住宅を申請する流れについてご紹介します。
用意するもの
ー長期優良住宅を申請する際、何か用意するものはありますか?
基本的に住宅会社側が申請するものになるため、一般の方が特に準備するものはありません。
申請の流れ
ー長期優良住宅を申請する際、どのような流れになりますか?
「建築確認申請」という書類を出した段階で長期優良住宅の申請をしましょう。
家づくりの流れとしては、営業部との打ち合わせを重ねながら間取りを決めていきます。どのような家を建てるかという間取り図面が固まったら、都道府県や市の担当課に「建築確認申請」という書類を提出します。
「建築確認申請」を出した段階では間取り図面が決まっているため、そのタイミングで長期優良住宅の申請をするのがよいでしょう。
長期優良住宅とZEH住宅の違いって?
長期優良住宅をはじめ、ZEH住宅や認定低炭素住宅など数々の認定住宅がある昨今、どのような違いがあるのかわからない方も多いのではないでしょうか。
長期優良住宅とZEH住宅の違いについてお聞きしました。
ZEH住宅は省エネに特化、長期優良住宅はオールラウンダー
ー長期優良住宅とZEH住宅の違いはなんですか?
ZEH住宅は「住宅のエネルギーを0にする」ことを目的につくられた住宅であるため省エネ性能に特化している一方、長期優良住宅はオールラウンダーとして、全体的に最低限の性能を保てるような基準となっています。
たとえば長期優良住宅の認定基準では耐震性能が入っている一方、ZEH住宅では耐震性についての基準は設けられていません。対してZEH住宅では太陽光パネルを付けるよう定められていますが、長期優良住宅では太陽光パネルについての基準はありません。
ー認定住宅の種類によって、求められる性能が違うのですね
そうですね。認定住宅の種類によってもらえる補助金額も変わるため、こども未来住宅支援事業の場合ではZEH住宅のほうがもらえる補助金額は高くなっています。
自分の建てたい住宅がどのような補助金制度を使えるのか確認することが大切です。
今後、長期優良住宅は普及する?
長期優良住宅の普及はどのように進むのでしょうか。今後の動向や家づくりにおいて大切なことをお聞きしました。
長期優良住宅は最低基準に
ー長期優良住宅の普及は今後進みますか?
家を建てる際の最低基準として、長期優良住宅の基準が採用されていくと思います。補助金や減税制度の改正を重ねながら徐々に普及され、最終的には長期優良住宅=普通の住宅といった価値観に変化するのではないでしょうか。
ー現在はまだあまり普及していない印象を持ちますか?
いえ、長期優良住宅自体が全く普及していないわけではありませんが、長期優良住宅にすることで受けられる補助金や減税制度については知らない方が多いように感じます。
長期優良住宅の認定書1枚で終われるような申請もあるため、手続き上の便利さから言葉だけが一人歩きしているような感覚ですね。
ーお金の面でも大きなメリットがあることを知っていくことが大切ですね
お金面でのメリットについて知ることは大切である一方、多くの補助金や減税制度があり、専門的な知識が必要になるため、なかなか一般の方がすべて理解するのは難しい現状があります。
実務者の方が新しい情報を仕入れることはもちろん、ひとつの会社だけではなく地域全体で情報交換をすることも大切です。
制度を主軸に決めない事が大切
ーお得な制度がある期間を狙って家づくりをしたほうがよいのでしょうか?
家は自分にとって理想の暮らし方を実現するためのものですので、制度を主軸に家づくりを進めないようにしましょう。税制優遇や補助金制度はプラスアルファと捉え、必ずしも制度を一番に考えないことが重要です。
ー近年では住宅取得資金贈与の非課税枠がなくなるかもしれないという噂もお聞きしました
そうですね。住宅取得資金贈与の非課税枠が変わるかもしれないという報道があった際、多くのお客さまから贈与税に関する相談をいただきました。
住宅取得資金贈与とは、住宅を購入する際に親や祖父母からもらえる(贈与される)金額の一部を非課税にできるという制度のこと。この制度がなくなると住宅購入に踏み切る方が減り、経済には結構な大打撃になると考えられます。
ーということは、住宅取得資金贈与の非課税制度はなくならないのでしょうか?
非課税制度がなくなったとしても、代わりとなるような新しい制度が出てくると思います。住宅購入に関する制度は日々名前や形を変えて登場しているため、「この制度がなくなるから駆け込みで家を建てよう」と急ぐことはおすすめできません。
家づくりのタイミングは世帯によって異なるため、自分のタイミングを見極めながら使える制度を活用していくことが大切です。
まとめ
いかがでしたか?長期優良住宅のメリットや注意点、家づくりの考え方などを学べましたね。
住宅購入に関する制度は多種多様なものがあり、一人ですべて網羅するのは難しいでしょう。住宅会社と相談しながら、かしこく家づくりをしていきましょう!
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