親からの贈与

親からの贈与で住宅を購入するときの節税方法 | 制度や特例を解説

2023年2月6日

「親からの贈与を元手に家を買いたいけど、税金が心配」
「親から贈与を受けたので、節税のために使える制度が知りたい」

このようにお考えではないでしょうか?

親から贈与を受けた場合、できるだけ節税したいものです。

この記事では、親からの贈与を受けて住宅を購入するときの節税方法について解説します。具体的な制度や特例についても解説していますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

 

親からの贈与にかかる税金の基礎知識

親からの贈与を受けた場合には、どのような税金が課されるのでしょうか?

 

贈与税について

個人間で財産の無償譲渡があった、つまり贈与があったときに課される税金が贈与税です。

贈与税は、親族間の贈与に対しても課されます。このため、親から子への贈与でも、基本的には贈与税を支払わなければなりません。なお、この場合に贈与税を支払わなければならないのは、贈与を受けた側である子です。

また、贈与税の課税方式は、基本的に暦年課税です。暦年課税とは、1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた金額に応じて、課税される方式です。暦年課税の税率には以下の2種類があります。

・一般税率
・特例税率

上記のいずれも、贈与額が多くなるほど税率も大きくなる累進課税です。ただし、特例税率は一般税率に比べて税率が低く設定されています。つまり、特例税率のほうが贈与税は安く済むということです。なお、特例税率に該当する条件は以下の通りです。

・贈与する側が両親や祖父母、贈与される側が子や孫
・贈与される側の子や孫が、贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上

上記の条件があるため、知人間の贈与や、親子間贈与であっても子が未成年の場合などには、一般税率が課されます。

 

贈与税がかかるケース

親子間でも贈与税が課される具体例を2つご紹介します。

1つめは、不動産を贈与した場合です。贈与税は現金の贈与に限らず、財産の贈与に対して課税されます。このため、土地やアパートなどの不動産の贈与についても贈与税の支払いが必要です。

2つめは、贈与を受けた現金を貯金に回した場合です。生活費や教育費の用途であれば贈与税はかかりませんが、贈与を受けた現金が余ったからといって貯金に回してしまうと課税されます。このほか、車や株の購入に充てた場合にも贈与税が発生するため、注意が必要です。

 

贈与税がかからないケース

親子間の贈与において、贈与税がかからないケースもあります。ここでは2つご紹介します。

1つめは、年間110万円以下の贈与です。暦年課税では、非課税枠が110万円に設定されています。つまり、年間110万円までの贈与に対しては贈与税がかからないということです。

2つめは、生活費・教育費に使う場合です。贈与額を生活費や教育費に使うのであれば、非課税枠の110万円を超えても贈与税は課されません。ただし、異なる使途や貯金に回した場合には贈与税が発生することには注意しましょう。

ケースによって、贈与税がかかる場合とかからない場合があるため、しっかり理解することが必要です。

 

親からの贈与で住宅購入するときに利用できる制度・特例3つ

親からの贈与で住宅を購入する場合に、利用できる制度や特例について3つ解説します。

 

① 基礎控除

ここでいう基礎控除とは、暦年課税の場合の非課税枠110万円のほか、贈与額から非課税枠を差し引いた課税対象額に応じて決まる控除額を指します。

以下に具体例を挙げます。

【例】親から子(25歳)に500万円の贈与があった場合
親子間の贈与であり、かつ、子の年齢が18歳以上であるため、税率は特例税率が適用
500万円(贈与額)-110万円(非課税枠)=390万円(課税対象額)

課税対象額が390万円の場合の税率は15%、控除額は10万円
390万円(課税対象額)×15%-10万円(控除額)=48万5,000円(贈与税額)

上記のように、非課税枠や控除額などの基礎控除額を差し引いて、贈与税額が決まります。

 

② 住宅取得資金贈与の非課税特例

暦年課税には前述の通り基礎控除がありますが、住宅購入にともなう贈与では、贈与額も大きくなります。この場合、基礎控除だけでは大きな節税は期待できません。

そこで制度化されたのが、住宅取得資金贈与の非課税特例です。2022年1月1日以降に住宅を取得するために使うお金の贈与があった場合、最大1,000万円まで非課税にできます。
この特例のおもな条件は以下の通りです。

・両親や祖父母からの贈与であること
・贈与を受ける子・孫が、贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上であること
・贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること
・贈与を受けた年の翌年の3月15日までに、贈与額全額を用いて住宅を購入し、住み始めること

なお、住宅取得資金贈与の非課税特例は、2023年12月31日まで延長されています。

 

③ 相続時精算課税制度

相続時精算課税制度とは、2,500万円までの贈与財産について非課税とする制度です。ただし、贈与時には非課税ですが、相続時には贈与税が発生します。相続時精算課税制度は、言い換えると贈与税を後回しにする制度であり、節税ではない点に注意が必要です。

相続時精算課税制度のおもな条件は以下の通りです。

・贈与した人と受けた人が親子または祖父母と孫の関係
・贈与した人は、贈与した年の1月1日時点で60歳以上
・贈与を受けた人は、贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上

また相続時精算課税制度は、住宅取得資金贈与の非課税特例と併用可能です。一方で、一度選択すると暦年課税が使えなくなることには留意しましょう。

>>相続時精算課税制度についてくわしく知りたい方はこちら。

 

【親からの贈与】住宅購入に関する制度・特例を使うときの注意点4つ

親からの贈与で住宅を購入する際、制度を利用する場合の注意点を4つ解説します。

 

① 要件を満たしているか確認する

まず制度の要件を満たしているか、しっかり確認しましょう。制度に該当すると思って贈与を受けた後、該当しないことがわかり贈与税を多く支払うようなことがないよう、注意が必要です。

制度や特例によって、細かい要件がいくつもあるため大変ですが、関連省庁のページを確認するなどして、正しい情報を得ましょう。

 

② 節税効果があるか判断する

節税効果がある制度利用なのか、判断することも重要です。制度があるからといって手当たり次第に利用するのではなく、節税効果がどのくらい得られるのか必ず試算しましょう。

なおこの際、制度を使う場合と使わない場合だけでなく、ほかの制度と比べて節税効果はどちらが大きいかという点も確認することをおすすめします。

 

③ 併用できない制度・特例について留意する

制度の中には、併用できないものがあります。たとえば、暦年課税と相続時精算課税制度です。
この場合、利用できなくなる制度の節税効果も確認しておきましょう。こうすることで、自分にメリットの大きい制度を選択することが可能です。

 

④ 申告を忘れずに行う

利用する制度によっては、贈与税がまったくかからない場合も出てきます。そのような場合でも、申告は忘れずにおこないましょう。

隠す意図はなくても、申告漏れは最悪の場合、脱税とみなされます。

せっかく制度利用で節税したにもかかわらず、余計なペナルティを受けないよう注意が必要です。

 

贈与税の申告について

贈与税の申告について、必要な書類や申告方法を解説します。

 

申告に必要な書類

申告に必要な書類は、利用する制度や特例によって異なります。贈与税の申告書については以下の通りです。

・暦年課税のみ:申告書第1表
・暦年課税と住宅取得資金贈与の非課税:申告書第1表+第1表の2
・相続時精算課税のみ:申告書第1表+第2表
・相続時精算課税と住宅取得資金贈与の非課税:申告書第1表+第1表の2+第2表

上記申告書以外では、マイナンバーカードが必要です。また、各制度の利用に年齢や親子関係などの条件がある場合には、それを証明する戸籍や住民票などが必要になります。

 

申告方法

申告は、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の期間内におこないます。場所は、贈与を受ける人の住所地を所管する税務署です。

なお、税務署の窓口だけでなく、電子申告も可能なため、しっかり期間内に提出しましょう。

 

まとめ:親からの贈与で住宅購入する際には制度・特例を利用して節税しよう

この記事では、親からの贈与を受けて住宅を購入するときの節税方法について、具体的な制度や特例を取り上げながら解説しました。

住宅購入のための贈与は金額も大きくなることが予想されるため、節税の効果も大きくなります。

このため、節税につながる制度をしっかり理解し、利用しましょう。